病気・がん腸閉塞(イレウス)

腸閉塞(イレウス)

腸閉塞(イレウス)は異物や炎症、腫瘍などにより腸管が塞がれた状態(機械的イレウス)、あるいは開腹手術などで腸管が麻痺(まひ)(拡張)して腸の蠕動運動が障害された状態(麻痺性イレウス)を指します。
日本では従来、腸閉塞とイレウスは同じ病態として捉えられてきましたが、腸閉塞は腸管の閉塞、イレウスは腸管の麻痺、と区別されることもあります※1
イレウスになると、消化物が腸内をスムーズに移動できなくなり、閉塞部位より上部(口側)に多量の消化物がたまります。そのため便やガスが腸内に充満して、腹痛や嘔吐などさまざまな症状が起こります。
治療の基本は絶食と補液ですが、保存療法でも症状が改善しない場合や血行障害のある場合は手術が必要となるものもあります。絞扼性(こうやくせい)イレウスでは腸管壁の血管が圧迫されて血行障害が起こることで、出血や潰瘍、穿孔(せんこう)、腹膜炎などが生じ、死につながるリスクもあるため早期の治療が必要になります。

  • ※1 急性腹症診療ガイドライン出版委員会 編. 急性腹症診療ガイドライン2015. 医学書院, 東京, 2015

<症状>

主な症状には、腹部全体の痛み、便秘、嘔吐、腹部膨満、発熱、頻脈などがあります。腹痛は軽いものから激痛を伴うものまでさまざまです。
絞扼性イレウスはお腹の一部が持続的に痛むのが特徴で、腹膜に炎症が起きたときにみられる腹膜刺激症状などが現れることがあります。

<原因>

機械的イレウス:
腸が物理的に閉塞している状態で、閉塞性と絞扼性に分けられます。
閉塞性イレウスは血行障害を伴わず、胆石や腫瘍、腹部手術などによる癒着などが原因で腸管が塞がれることで起こります。一方、絞扼性イレウスは血行障害を伴い、腸重積鼠径ヘルニア嵌頓(そけいヘルニアかんとん)、腸軸捻転症(ちょうじくねんてんしょう)などにより腸管がねじれることが原因です。

麻痺性イレウス:
閉塞の原因が明確でなく、腸管運動の障害によって起こるものです。
開腹手術、急性腹膜炎、薬剤、腸間膜の血栓・塞栓(そくせん)などが原因で、腸管が麻痺することで起こります。

イレウスの病態:

閉塞性イレウス(血行障害なし)
閉塞性イレウス(血行障害なし)

絞扼性イレウス(血行障害あり)
絞扼性イレウス(血行障害あり)

麻痺性イレウス
麻痺性イレウス

<検査>

まず病歴に関して問診が行われます。症状が現れた時期や腹痛の程度などのほか、腹部の手術歴の有無、がん・ヘルニア・クローン病などの病気の既往歴の有無、内服薬の有無などについて確認します。また身体所見として、腸蠕動(ちょうぜんどう)、腹部の膨らみ、腹膜刺激症状、腸雑音などを確認したり、鼠径部(そけいぶ)を観察したりします。
問診でイレウスが疑われたら、血液検査を行って脱水の有無を確認し、同時に腹部のX線検査を行います。X線検査ではイレウスに特徴的な腸管の拡張やニボー(腸管内にガスと液体がたまり、その境がX線に画然とした鏡面像として水平に映し出されたもの)の有無を確認します。
X線検査で疑いが残れば、より正確に診断するため造影CT検査を行います。造影CT検査では閉塞部位や閉塞の程度、血行障害の有無などを評価します。
造影剤を使った検査ができない場合には単純CT検査が行われます。その他、有用な検査に超音波検査があります。超音波検査では腸管内の貯留物の程度や腹水の有無、腸蠕動の低下・亢進(こうしん)などについて確認します。

腹部のX線写真(ニボーが多発し、鏡面像(青矢印)がわかります):

腹部のX線写真

<治療>

イレウスの治療には保存療法と手術があります。

保存療法:
主に軽度のイレウスに対して行われます。食事や飲水を中止して胃を休めつつ必要な水分などを点滴静注で補ったり、鼻腔から腸までチューブを挿入して腸の中の内容物を吸引して腸管内の圧力を下げたりします。

手術:
保存療法でも症状が改善しない場合や血行障害のある絞扼性イレウスなどに対して行います。最近は腹腔鏡による手術が導入されつつあります。
閉塞性イレウスのうち、腫瘍が原因の場合は、消化管内の減圧を行ったうえで可能であれば腫瘍を腸管ごと切除し、その後残った腸管同士をつなぎ合わせます(吻合)(ふんごう)。吻合できない場合は人工肛門をつくります。また、癒着(ゆちゃく)が原因の場合は癒着部分をはがしますが、腸管の損傷が激しい場合は腸管を切除する必要があります。
絞扼性イレウスで血行障害を伴う場合は、血行を再開させるため腸管のねじれ部分や折れ曲がった部分を修正します。ただし、腸管が壊死(えし)してしまった場合には腸管の切除・吻合が行われます。

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