病気・がん吸収不良症候群

吸収不良症候群

吸収不良症候群は、消化・吸収の働きが低下することで、食物中の栄養素が十分に吸収されずに起こる病気の総称です。栄養素の吸収は主に小腸で行われるため、吸収不良が起こるのは小腸粘膜に異常が生じた場合がほとんどです。
また、栄養素の吸収には食物の消化が必要なことから、消化が十分に行われない場合も吸収不良が起こります。食物の消化は主に胃と小腸で行われますが、消化には膵臓や肝臓、胆のうからの消化液の助けが必要で、分泌された消化液は十二指腸で食物と混ざります。
そのため、吸収不良症候群は、消化・吸収に関わる胃、十二指腸、小腸、膵臓、肝臓、胆道などの臓器に何らかの病気が生じたり、臓器を切除したりして食物の消化・吸収が十分に行われなくなった結果、起こります。
治療には消化・吸収不良を起こす原因疾患の診断が必須です。近年はCTやMRIを用いた膵疾患や胆道疾患の画像検査、バルーン内視鏡やカプセル内視鏡の進歩により、原因疾患の診断能が向上しています。

食物の消化・吸収に関わる臓器
食物の消化・吸収に関わる臓器

<症状>

体に必要な栄養素が十分に吸収されないことで栄養障害が起こり、下痢、脂肪便、体重減少、貧血、全身倦怠感、浮腫(ふしゅ)などさまざまな症状が現れます。また、ビタミンやミネラルの欠乏症として表のような症状が現れます。

ビタミン欠乏症

ビタミンA 発疹、夜盲症、成長障害など
ビタミンD くる病、骨軟化症、骨粗鬆症など
ビタミンE 貧血、歩行不調など
ビタミンK 出血傾向、新生児脳内出血など
ビタミンC 壊血病(脱力感、体重減少、出血など)、易疲労感など
ビタミンB1 脚気(かっけ)、手足のしびれ、だるさなど
ビタミンB2 口唇炎、口角炎、舌炎、脂漏性(しろうせい)皮膚炎など
ビタミンB6 脂漏性皮膚炎、舌炎、口角炎など
ビタミン12 貧血、末梢神経障害、認知障害など

ミネラル欠乏症

カルシウム 骨の発育障害、てんかん、不眠など
マグネシウム けいれん、しびれ、めまいなど
貧血、易疲労感、食欲不振など
亜鉛 味覚障害、発育不良、性機能低下など

参考:山本隆行ほか. 臨床外科2016; 71(3); 305-309

<原因>

小腸関連:
以下の2つに大別できます。

(1)悪性疾患やクローン病カルチノイド症候群などを発症し、治療目的で小腸の大部分を切除した場合(小腸を広範囲に切除したことで栄養素を吸収する面積が十分でなくなるため)

(2)セリアック病、アミロイドーシスなど小腸粘膜に障害を起こす病気を発症した場合(栄養素の吸収が十分でなくなるため)

小腸以外の臓器関連:
小腸以外の臓器に関連した病態として、胃全摘、膵切除、胆のう摘出など手術に関連したものや、慢性膵炎、閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)など疾患に関連したものなど、多くのものがあります。

<検査>

血液検査を行い、血液中のたんぱく質やコレステロール、鉄などの栄養素が不足していないかどうかを調べます。症状や血液検査などから吸収不良症候群が疑われたら、どのような栄養素の消化吸収障害があるかを調べるため、さまざまな消化吸収試験が行われます。例えば脂質の吸収障害が疑われる場合は、一定量の脂質を含む試験食を食べてもらい、消化・吸収されずに便と一緒に排泄された脂肪の量を測定します。
そのほか、吸収障害を起こす粘膜病変の有無を確認するため、小腸内視鏡や小腸X線造影を用いて小腸粘膜の状態や小腸の形を観察したりします。

<治療>

治療の基本は原因となる病気を治すことですが、それと並行して個々の病態に応じた適切な栄養管理を行います。
栄養管理の方法には静脈に細いチューブを挿入して体内に栄養を送る中心静脈栄養と、口もしくは細い管を通して腸に栄養を送る経腸栄養があります。下痢や腹痛などの症状が比較的軽い場合は経腸栄養が行われるのに対し、下痢や腹痛などの症状が強い場合や栄養状態が極端に悪化している場合は中心静脈栄養が行われます。

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