病気・がん大腸がん(直腸がん・結腸がん)の解説と症状

疾患の解説

大腸がんは食生活の欧米化した日本では増加傾向にあります。大腸がんには直腸がんと結腸がんがありますが、特に結腸がんが急速に増加しています。動物性の脂肪を摂ると、消化を助けるために胆汁酸が多く分泌されます。脂肪の消化の際に発生する物質のなかに発がん物質があり、大腸の粘膜にがんが発生すると考えられています。

大腸の粘膜
大腸の粘膜

大腸も他の消化器器官と同じように内側は粘膜で覆われ、その下は4つの層で構成されています。大腸にできるポリープの1つで腺腫(せんしゅ)とよばれる良性の腫瘍が粘膜にできることがあります。大腸がんの多くはこのポリープが深く関係しているといわれています。粘膜から直接発生する平坦型や陥凹(かんおう)型のがんもありますが、発がんの経緯はわかっていません。

<占拠部位>

大腸がんの診断、治療を行ううえで、大腸を7つの区分、また大腸壁を4つの区分に分けています。

大腸がんができやすい部位は直腸とS状結腸で、全体の約70%をしめています。直腸は大腸の全体の約10%を占めますが、全大腸がんの約50%が発生するほどがんができやすい場所です。2番目に多いのは便が長い間貯留しているS状結腸です。

結腸の区分
結腸の区分

<肉眼的分類>

大腸がんは、X線検査、内視鏡検査所見による肉眼的分類として以下の0型~5型に分類されます。

0型:表在型、1型:腫瘤(しゅりゅう)型、2型:潰瘍限局型、3型:潰瘍浸潤(しんじゅん)型、4型:びまん浸潤型、5型:分類不能

表在型(0型)は早期がんとされ、そのなかで、ポリープのように盛り上がった隆起(りゅうき)型と、隆起の目立たない表面型の2つに大別されます。隆起型はポリープの一種である良性の腫瘍が大きくなるにつれがん化するタイプです。形状から有茎性、亜有茎性、無茎性の3種類があります。表面型のなかには表面隆起型、表面平坦型、表面陥凹(かんおう)型などがあります。表面陥凹型をとる形態のがんは、小さくても粘膜下層以下に浸潤する速度が速く悪性度の高いがんといわれています。

大腸早期がんの肉眼的分類
大腸早期がんの肉眼的分類

一方、その他の進行がんは、腫瘤型、潰瘍限局型、潰瘍浸潤型、びまん浸潤型に分類されます。腫瘤型は盛り上がるようにがんが大きくなっていくもので、がん部位と正常組織の境界がはっきりしています。潰瘍限局型と潰瘍浸潤型は潰瘍のような形ができ、がんがそれを取り囲む堤防のように増殖していきます。がんとの境界がはっきりしているものが限局型、不明瞭なものを浸潤型と分類しています。進行する大腸がんのなかで80~90%は潰瘍限局型です。

進行がんまで進むとリンパ節や他の臓器へ転移がみられますが、大腸がんの場合、比較的進行は遅いと考えられています。

大腸がんの肉眼的分類
大腸がんの肉眼的分類

<深達度での分類>

大腸壁は粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜の層から構成されています。

腸管表面の粘膜から発生したがん細胞が、腸壁の各層のどのくらいまで浸潤(しんじゅん)しているかを示したものが「深達度(しんたつど)」です。この深達度によりリンパ節転移陽性率が異なることから、深達度はその後の治療法の選択にとって重要な要素となっています。

早期がんとは、深達度が粘膜、粘膜下層までのがんとし、固有筋層以下まで進んだものを進行がんとしています。さらに、粘膜内にとどまっているものを粘膜癌、粘膜下層にとどまっているものを粘膜下層浸潤癌といいます。

がんの浸潤度による早期・進行がんの分類
がんの浸潤度による早期・進行がんの分類

<病理組織学的分類>

切除した大腸がんの断片からがんを顕微鏡で観察し、組織学的に分類することでがんの性質を分類します。

大腸がんは大きく分けて、腺癌(せんがん)扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)、腺扁平上皮癌があります。大腸がんは大部分が腺癌です。腺癌には高分化型腺癌(こうぶんかがたせんがん)から低分化型腺癌があり、大腸がんの80~90%が高~中分化型腺癌です。低分化型腺癌、粘液癌は10%以下です。

大腸がんの大部分は、潰瘍限局型(潰瘍の様なものができ、その周りにがんが防波堤のようにできる)で、多くは腺管形成の盛んな高分化型腺癌です。リンパ節転移も比較的少なく手術後の成績も良好です。

<転移>

がんの特徴として転移がありますが、転移にはリンパ節転移血行性転移腹膜(ふくまく)転移などがあります。

リンパ節転移:
リンパ節転移は、がん細胞が発生した部位からリンパの流れにのってリンパ節にたどりつき、そこで増殖することをいいます。次々とリンパ節に移動し、増殖することを繰り返していくと考えられています。そのため、がんの病巣(びょうそう)を切除する際には広範にできるかぎりのリンパ節を切除することが、再発を防ぐために非常に重要です。

リンパ節転移の仕組み
リンパ節転移の仕組み

血行性転移:
血液の流れにのって、他の臓器へたどり着き、そこで増殖することを血行性転移といいます。転移する臓器は血液の流れに関係しています。

血行性転移の仕組み
血行性転移の仕組み

腹膜転移:
腹膜転移は、がん細胞が腹腔(ふくくう)内にちらばることです。多量の蛋白を含んだ腹水がたまり、がん細胞が浮遊した状態になります。

腹膜転移の仕組み
腹膜転移の仕組み

大腸は腹腔(腹部のなか)にあります。進行すると、大腸がんは大きくなって腹膜転移することがあります。また、肝臓に転移する可能性があるので、大腸がんの場合は肝臓の状態を注意深く観察していきます。

症状

大腸がんの代表的な症状は、血便、便通異常(便秘、下痢)、腹痛です。

早期がんは2センチ以下の小さながんがほとんどで、症状もないことが多く、肛門出血に気づいて検査するか、大腸がん検診で見つかるケースが増えています。

進行大腸がんではがんの部位、大きさにより様々ですが以下のような症状があらわれます。

<結腸がん>

盲腸と上行(じょうこう)結腸のがんは、腸の内径が太く便通の異常がおこりにくいこと、この場所の便は液状であること、出血しても排便までに時間がかかるため、発見しにくい傾向があります。発見されるころにはがんが大きくなり、腹部のしこり(腹部腫瘤:ふくぶしゅりゅう)や、出血による貧血がおこり、全身倦怠感が出始めて気づくこともあります。この様な状態の時は、がんで内腔が狭くなっており、腹部膨満感や無理に内容物を出そうとした結果、腹痛などの症状があらわれます。

下行(かこう)結腸やS状結腸ではがんにより内腔が狭くなると、便が通過しにくくなり便秘と間歇(かんけつ)的な下痢などの便通異常がみられます。腹痛や腸閉塞(ちょうへいそく)(便とガスがでない)のような症状になることもあります。肛門に近い部位なので血便で発見しやすくなります。

<直腸がん>

直腸がんの出血は便に血液が付着して発見されることが多く、比較的鮮血に近い状態です。がんで直腸内が狭くなると、便が細くなったり、排便した後も残便感が残ります。これは便が排泄された後もがんがあるために便意をもよおすのです。

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