病気・がん膵臓がん(膵がん)の検査

検査:生化学的検査

血液検査で膵臓の酵素や腫瘍マーカー値、ビリルビン値の動きをみることにより膵臓機能の異常、膵がんを発見できることがあります。

膵がんにより膵管がつまると、膵管を流れている膵液がたまり、アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなどの膵臓の酵素が血液中にでてきます。そのため、血液検査でこれらの酵素が高値を示したときは、膵臓の病気の疑いがあります。また、ALP、γ‐GTPなどの胆道系酵素の上昇もおこるので、このような結果が出たときは、胆道系疾患だけでなく膵頭(すいとう)部の異常も疑う必要があります。

腫瘍マーカーは腫瘍が大きくなるにつれて、血液中の濃度が上昇します。しかし、膵がんだけに特異的なマーカーではなく、膵炎でも陽性となることがあるので注意が必要です。

検査:CT検査

検査イメージCT検査は身体にあらゆる角度からX線照射し、得られた情報をコンピューターで解析するものです。造影剤を使う場合と使わない場合がありますが、造影剤を用いる方法では病変がより鮮明に描き出され、検査したい臓器やその周辺をミリ単位の断層写真として観察できます。CT検査の結果はX線検査や内視鏡検査の結果と総合して病気を判定することに役立っています。また、がん治療(化学療法放射線療法など)の効果の把握などにも用いられています。

膵臓の場合は造影剤を静脈から注射して行うダイナミックCT検査によって、鮮明な画像を映し出すことができるようになりました。膵がんの診断だけでなく、膵がんで心配な肝臓やリンパ節への転移や、周りの臓器への浸潤(しんじゅん)の確認が可能です。また、手術の判断にも役立っています。膵頭(すいとう)部がんでは、腫瘍部がやや黒くなり、それより末梢の主膵管がやや拡張します。膵体(すいたい)がん、膵尾(すいび)部がんでも同じ像が映し出されます。これにより腫瘍部より先にどのくらい正常組織が残っているか推測できます。

検査:PET検査(Positron Emission Tomography)

検査イメージPET(陽電子放射断層撮影)検査は、がん細胞が正常細胞よりも糖分を多く必要とする性質を活かし、陽電子を放出するブドウ糖に似た薬剤を利用し、体内での薬剤の分布を画像化する診断法です。CT検査やMRI検査が形態を画像化するのに対し、PET検査は細胞の活動性に応じて薬剤が集まる原理を利用することで、細胞の代謝の状態を画像化する検査です。また、PET検査は1回の検査で全身において、がんの検査を行うことができることが大きな特徴です。

しかし、全てのがんをPET検査で早期に発見できるわけでありません。薬剤の集積が少ない性質のがんもありますし、消化管粘膜に発生する極早期のがんの発見は困難です。また、薬剤は炎症部にも集まる性質をもつため炎症部とがんとの区別が難しいという問題もあります。

PET検査で発見されやすいがんとしては、肺がん、食道がん、膵臓がん、大腸がん、乳がんがあげられ、さらに、いままでの検診では見つけることが困難であった甲状腺がん、悪性リンパ腫、卵巣がん、子宮体がんが発見できることが期待されています。他胃がん、腎がん、尿道がん、膀胱がん、前立腺がん、肝細胞がん、胆道がん、白血病など場所によっては有用性が低い場合があるともいわれています。

平成22年4月から、PET検査は早期胃がんを除く全ての悪性腫瘍に保険が適応されるようになりましたが、他の検査や画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない場合に限定されています。その他の適応外の疾患や検診として受診する場合には全額自己負担となるため、かなり高額な検査になります。また、薬剤の製造装置および撮影装置の設備費用が非常に高く、検査可能な医療機関は限られています。

検査:腹部超音波検査

検査イメージ腹部にゼリーを塗って体表から生体内に超音波パルスを入射し、体内の組織から反射してくる超音波を感知し、その強弱差を画像にする検査方法です。肝臓、膵臓、胆道をはじめとする腹部の検査に欠かせない検査として位置づけられています。簡便で患者さんの身体に負担が少ないというメリットがあります。超音波検査では、手術前、手術後(再発)、がんの壁外への進展や肝臓への転移などのチェックをするのに役立つ検査法です。

膵頭(すいとう)部がんでは腫瘍部分が黒くなり、膵体(すいたい)部、膵尾(すいび)部の主膵管の拡張がみられます。デメリットとして、技術の差により映し出される像に差が出やすいことや、身体の構造上、腸管ガスが重なり合いやすく、膵臓全体を見ることができないことがあります。

検査:超音波内視鏡検査(Endoscopic ultrasonography:EUS)

超音波内視鏡検査(EUS)は組織の構造が変化する部位で、音波が跳ね返ってくる現象(エコー)を利用して、跳ね返りの強さや部位を画像として映し出す検査です。体表からの超音波検査では胃や腸の中の空気や腹壁、腹腔(ふくくう)の脂肪、骨が、エコーをとらえて画像にする際に妨げになることがあります。また、体表からのエコー検査では検査目的とする対象臓器近辺までの画像を得るために超音波の減衰が少ない比較的低周波数の超音波により検査を行いますが、低周波数の超音波検査では分解能に限界があり、高い分解能を持った詳細な画像情報が必要となるがんの壁深達度(へきしんたつど)診断などには適しません。その欠点を改良したものが、超音波内視鏡検査です。超音波内視鏡は、内視鏡先端部にエコーを送受信する「超音波振動子」を兼ね備えた内視鏡です。

特に膵臓は身体の奥にあるため、膵臓の手前にある胃や腸のなかの空気や腹壁、腹腔(ふくくう)の脂肪が邪魔をして、通常の体表からの超音波検査では、エコーをとらえにくいという問題があります。そこで、膵臓の近くの胃や十二指腸から超音波(内視鏡)検査をすることで、膵臓の詳細なエコー像を確認できる超音波内視鏡検査が役立っています。
超音波内視鏡検査では、超音波が胃など体腔内に溜まったガスを透過できない為、超音波振動子と観察部位との間に水を介在させて対応(脱気水充満法等)をしています。

超音波内視鏡先端部
超音波内視鏡先端部

脱気水充満法
脱気水充満法

超音波内視鏡画像
超音波内視鏡画像

膵管腔内(すいかんくうない)超音波検査(Intraductal ultrasonography:IDUS):
十二指腸乳頭(にゅうとう)部から主膵管へ細い超音波プローブを挿入し、主膵管や膵臓の観察もできるようになり、より詳細な画像情報を得ることが可能になりました。超音波プローブとは、内視鏡の鉗子口から挿通する細径タイプのプローブで、先端に超音波(エコー)が送受信できる超音波振動子を備えており、超音波内視鏡では挿入できない細い胆管・膵管に挿入することが可能です。

超音波内視鏡ガイド下穿刺(Fine needle aspiration:FNA):
病理(びょうり)検査を行うために、超音波内視鏡で膵臓周囲を確認しながら、穿刺(せんし)と呼ばれる方法で膵臓の細胞を採取する超音波内視鏡ガイド下穿刺(Fine needle aspiration:FNA)が行われることもあります。FNAでは、超音波内視鏡を挿入し、胃から膵臓の腫瘍に針を刺して細胞を採取します。体外からの組織採取(バイオプシー)とくらべて、病変部まで最短のルートで採取が出来るものです。そのため、体外からでは検出不可能な病変組織や、小さな病変などが採取しやすい特徴があります。

超音波プローブ(IDUS)
超音波プローブ(IDUS)

超音波内視鏡(FNA用)の先端部
超音波内視鏡
(FNA用)の先端部

検査:内視鏡を用いた検査方法

(1)内視鏡的逆行性胆膵管造影法 (Endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)

内視鏡的逆行性胆膵管造影法(ERCP)は、膵液が膵管から十二指腸へ流れる出口となっている十二指腸乳頭(にゅうとう)部から内視鏡を介して造影剤を注入し、膵管をX線撮影する検査です。膵がんの大部分を占める膵管がんを見つけるのに重要な役割を果たしている検査です。描出能が優れているうえに、X線透視下で膵管の生検(せいけん)(細胞の採取)や膵液の採取なども可能で、病変部の詳細な情報が得られます。


ERCP

膵頭(すいとう)部がんや膵体(すいたい)がんでは膵管の閉塞(へいそく)が、膵尾(すいび)部がんでは狭窄(きょうさく)や断裂が観察され、ERCPを併用(へいよう)し、病理検査を行った結果の膵臓がんの発見率は93%と最も高率に異常を検出しています。

一方、デメリットとして急性膵炎をおこす危険性や、技術的な難しさ、患者さんにとって負担が大きいなどがあります。

(2)膵管鏡

膵管鏡は内視鏡を膵管内に挿入して観察を行う方法で、膵管内乳頭腫瘍や膵がんの観察が可能になります。

一般的に経口的に行われる膵管鏡は親子スコープという2本のスコープを用いて、十二指腸乳頭部から膵管内に内視鏡(子スコープ)を挿入して観察します。親スコープで乳頭と膵管口を切開(内視鏡的乳頭切開術)し、続いて内視鏡(子スコープ)を膵管内に挿入します。


膵管鏡

検査:MRI検査、MR胆膵管撮影(MRCP)

検査イメージMRI検査は磁気による核磁気共鳴現象を利用して画像に描き出すものです。MRI検査の結果はX線検査や内視鏡検査の結果と複合して、総合的な判定に役立っています。

MR胆膵管撮影(MR cholangiopancreatography:MRCP)

MRI検査の一種で、MRIの機械でスキャンするだけで膵管像を見ることができます。ゆっくりと膵液の流れの動きを観察し、膵管の像を映し出します。膵がんの大部分は膵管壁から発生するため、膵管壁の異常な像を見つけだすのに役立ちます。造影剤を使わなくてよいこと、内視鏡的逆行性胆膵管造影法(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)に比べると、細い分枝や画像の鮮明さにおいては劣りますが、何より患者さんの身体に負担が少なく、全体像を描き出すことができる点で有用です。また技術による診断の差があまりでないこと、主膵管ががんでつまっていても、その先の部位を観察することが可能であること、急性膵炎や内視鏡を膵管に挿入できない状況でも行うことができるなどのメリットがあります。

一方、肥満や腹水がたまっていると画像が劣ることがあり、また、心臓ペースメーカーをつけている患者さんには行えないなどのデメリットがあります。

検査:腹部血管造影検査

血管にカテーテル(細い管)を通して造影剤を注入し、膵臓に分布している血管をX線撮影する検査法です。病変の範囲だけでなく、血管や周囲の臓器への浸潤(しんじゅん)を詳しく観察できるので、手術のために必要な情報を得ることができます。しかし、近年患者さんの身体に負担の少ない検査法、CT検査やMRI検査が発達したため、役割は減少してきています。

膵がんの診断以外に、炎症により膵臓や周囲臓器の血液の流れが激しく変化する膵炎の診断・治療のために行うことがあります。

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