病気・がん原因不明の消化管出血(OGIB)

原因不明の消化管出血(OGIB)

原因不明の消化管出血(Obscure Gastro-Intestinal Bleeding:OGIB)とは、上部消化管内視鏡検査および大腸内視鏡検査のいずれの検査でも異常がなく、出血源が不明な消化管出血をいいます。具体的に、下血や血便などの目に見える出血が再発または持続する場合、鉄欠乏性貧血が再発または持続する場合、便潜血検査が陽性の場合にOGIBを疑います。全ての消化管出血の約5%を占めるといわれ、その出血源の多くは小腸に由来すると考えられています。
従来、OGIBの出血源の特定には小腸X線造影や造影CTなどが用いられてきましたが、消化管の70%を占める小腸全体を観察・治療することは困難でした。しかし、カプセル内視鏡やバルーン内視鏡などの新しい検査方法の登場により、現在では50%近いOGIBの出血源を発見・治療できるようになりました。

OGIBの出血源となりうる主な消化管

<症状>

出血部位や原因疾患の違いにより異なる症状が現れます。
上部消化管からの出血ではタール便(下血ともいいます)、下部消化管からの出血では暗赤色~鮮血便(血便ともいいます)がみられます。また、腹部に何らかの炎症が起きている場合には腹痛や腹部膨満などの症状が現れます。出血が原因で貧血がみられることもあります。

<原因>

OGIBの原因には小腸以外の病変も含まれますが、ほとんどが小腸からの出血です。小腸出血の原因となる病気には多くのものがあります。クローン病腸管ベーチェット病、NSAIDs起因性腸炎などは小腸に炎症を起こす疾患です。また、悪性リンパ腫消化管間質腫瘍(GIST)などの小腸腫瘍や、動静脈奇形、小腸憩室なども小腸出血の原因となります。

<検査>

小腸出血の原因や出血部位をある程度推測するため、吐血の有無、便の色・性状・回数、既往歴、鼻出血の有無、使用中の薬剤などに関して問診が行われます。
次に上部消化管内視鏡検査や大腸内視鏡検査を行い、食道、胃、十二指腸、大腸からの出血でないことを確認します。また、小腸病変あるいは小腸以外の病変の有無を調べるために造影CT検査を行うこともあります。造影CT検査で小腸からの出血が疑われたら、小腸バルーン内視鏡検査を行います。小腸バルーン内視鏡検査で出血源が見つかれば、そのまま内視鏡による止血術を行うことができます。
一方、下血や血便などが続く場合や鉄欠乏性貧血あるいは便潜血陽性を繰り返す場合は、小腸バルーン内視鏡検査の代わりに小腸カプセル内視鏡検査を行うこともあります。小腸カプセル内視鏡は、カプセル型をした内視鏡を飲み込む検査のため患者さんの苦痛が抑えられ、小腸全体を観察できるのが特徴です。

<治療>

小腸出血に対しては小腸内視鏡による止血術が行われます。ただし、内視鏡による止血術ができない場合や大きな動静脈奇形がある場合は、外科手術もしくは画像下治療(Interventional Radiology:IVR)が行われます。IVRは主としてX線透視下に、血管を通してカテーテルを出血部分まで導き、血管を収縮させたり、塞栓(そくせん)物質で血行を遮断させたりして止血する方法です。
その他、NSAIDs起因性腸炎に対しては原因となる内服薬を変更したり、小腸悪性腫瘍や憩室(けいしつ)に対しては手術による切除が行われたりします。

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