病気・がん機能性ディスペプシア(FD)

機能性ディスペプシア(FD)

胃の痛み、胃もたれ、胸やけ、吐き気……そんなつらい症状が慢性的に続いているのに、病院で内視鏡検査を含む検査を行っても異常が認められない場合、機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia : FD)と診断されることがあります。機能性胃腸症と呼ばれることもあるこの症状は、以前は、「神経性胃炎」や「ストレス性胃炎」といわれたり、慢性的な炎症がないにもかかわらず「慢性胃炎」と診断されたりしていました。

自覚症状があっても炎症やその他の異常が確認できない病気として、非びらん性胃食道逆流症(Non-Erosive Reflux Disease : NERD)や過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome : IBS)がありますが、それぞれ異なった特徴を持つ病気と位置づけられています。
非びらん性胃食道逆流症(NERD)と機能性ディスペプシア(FD)は症状の一部は似ていますが、食道(胸の上部)に不快感が生じるのが非びらん性胃食道逆流症(NERD)で、胃(おなかの中心あたり)やみぞおちに不快感が生じるのが機能性ディスペプシア(FD)です(図)。

(図)非びらん性胃食道逆流症(NERD)と機能性ディスペプシア(FD)の不快感が生じる場所の違い

(図)非びらん性胃食道逆流症(NERD)と機能性ディスペプシア(FD)の不快感が生じる場所の違い

また、過敏性腸症候群(IBS)は大腸の機能障害で、症状は下腹部の不快感や下痢というかたちで現れます。

<症状>

わずらわしい食後のもたれ感(膨満感(ぼうまんかん))、早期満腹感(食べ始めてすぐに満腹になってしまうこと)、みぞおちの痛み、みぞおちが焼けるような感じの4つのうちの1つ以上が3ヵ月以上続いているのが機能性ディスペプシア(FD)です。それ以外にも、胃のむかつき、食欲不振、吐き気、嘔吐など、人によって様々な症状が出現します。
また、症状の内容、タイミング、頻度などによって、食後愁訴症候群(しょくごしゅうそしょうこうぐん)(Postprandial Distress Syndrome : PDS)、心窩部痛症候群(しんかぶつうしょうこうぐん)(Epigastric Pain Syndrome : EPS)に分類されます※1

  • ※1 日本消化器学会編集「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014―機能性ディスペプシア(FD)」(2014)

<原因>

この症状を引き起こす原因として、胃運動機能異常(胃が十分に動かず、食べたものをうまく十二指腸に送ることができないこと)や、胃酸過多(胃酸の出過ぎ)、胃の知覚過敏(小さな刺激に反応してしまう状態)、ストレス、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)への感染などが考えられていますが、まだはっきりと特定されていません。

<検査>

内視鏡検査:
胃潰瘍胃がんなど、炎症や潰瘍、腫瘍などを伴う病気でないことを確認する必要があります。

ピロリ菌の検査:
ピロリ菌を除菌すると症状が改善することがあるため、感染しているかどうかを確認する必要があります。

血液検査など:
全身の病気があるかどうかを確認する必要があります。

<治療>

生活習慣の改善:
刺激の強い食べ物や、脂肪の多い食事、アルコール、カフェインなどは、症状を悪化させることがあります。体の負担にならないよう、1日の食事量や1回の食事量を見直してもよいでしょう。
また、機能性ディスペプシア(FD)にはストレスが大きくかかわっているともいわれますので、ストレスがかかり過ぎないよう、睡眠や休息を十分に取ることも重要です。

薬物療法:
薬物療法では、症状に応じた対処療法を行います。胃酸の出過ぎを抑える薬や、消化管の運動機能を調整する薬、ストレスを和らげる薬などを服用することがあります。
また、ピロリ菌に感染していることが分かった場合は、ピロリ菌感染症を合併していると診断されて、除菌のための薬物療法(胃酸分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬を用いる除菌療法)が行われます。

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