内視鏡検査を知る
内視鏡検査前日までの食事と注意点

検査前の食事制限―「食べていいもの」「食べてはいけないもの」
内視鏡検査とは、口や鼻、肛門から内視鏡を挿入し、食道や胃・十二指腸、大腸などの状態を観察する検査です。食べ物の通り道となる消化管の内部を観察するため、検査前は、食事を制限して、おなかを空っぽに近い状態にすることが大切です。正しく食事制限ができていると、検査をよりスムーズに受けられるだけでなく、検査の精度向上にもつながります。
内視鏡検査では、検査当日は絶食をします。検査を確実に行うためには、絶食の少し前から消化のよい食事を心がけて、おなかに未消化物が残らないようにしておく必要があります。消化のよい食事とは、食物繊維や脂肪分が少なく、炭水化物やたんぱく質中心であること。また、食事の際によくかんで食べる、食事の量を控えめにすることも大切です。
「食べていいもの」は、例えば、白米や素うどん、食パン、脂身の少ない白身魚や鶏むね肉、卵、豆腐、バナナなどです。
一方、「食べてはいけないもの」は、乳製品、繊維質の多い野菜や果物、豆類、きのこ、海苔などの海藻類、薬味や香辛料の強すぎる食べ物などです。
食べてよい食品

白米、素うどん、食パン、鶏むね肉、白身魚、豆腐、じゃがいも、バナナ
避けるべき食品

玄米、そば、ラーメン、乳製品、ねぎなどの野菜、豆類、きのこ、海苔などの海藻類
スクロールできます
食べてよい食品 | 避けるべき食品 | |
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米類 | 白米、おかゆ、具の入っていないお餅 | 玄米、胚芽米、雑穀米 |
麺類 | うどん、そうめん、米粉めん(フォー・ビーフンなど) | そば、ラーメン、パスタ、春雨 |
パン | 食パン(レーズンなどが入っていないプレーンなタイプ) | 全粒粉パン、クロワッサン、デニッシュ、菓子パン(あんぱん・クリームパンなど)、ハンバーガー |
肉 | 脂肪の少ない赤身肉(牛ひれ・牛もも・豚ひれ・豚ももなど)、鶏ささみ、鶏むね・鶏もも(皮を除く) | 牛ばら肉、豚ばら肉、サーロイン、鶏手羽、鶏皮、ベーコン・ソーセージなどの肉加工品 |
魚介 | 脂肪の少ない白身魚(たら・鯛・ひらめなど)、ちくわ・かまぼこ・はんぺんなどの水産加工品 | 脂肪の多い魚(さば・あじ・ぶり・トロ・うなぎなど)、かに、たこ、いか、えび、貝、魚卵、干物 |
果物 | バナナ | 食物繊維・種の多い果物 |
その他 | とうふ、卵、卵豆腐、高野豆腐、豆乳、じゃがいも | 食物繊維の多い野菜、きのこ、豆類、おから、漬物、海藻、こんにゃく、ごま、ナッツ、野菜ジュース、果肉の入ったジュース、牛乳、乳製品(ヨーグルト・チーズなど) |
胃内視鏡検査は前日夕食から、大腸内視鏡検査では3日前からの食事の参考にしてください。
具体的な食事制限プランは、胃内視鏡検査と大腸内視鏡検査で異なりますので、次で詳しく説明します。
胃内視鏡検査の食事制限プラン
胃内視鏡検査(胃カメラ)を受ける方は、検査3日前から、お酒や脂質の多い食事はなるべく控えるようにしましょう。検査前日〜当日の流れを、午前・午後の検査ごとに以下に示しました。胃内視鏡検査は午前中に行うのが一般的ですが、お仕事や学校などで受診できない方、朝食後にお薬を飲んでいる方に向けて、午後に実施している医療機関もあります。
午前中に検査を予約している方
午前中に検査を予約されている方は、検査前日の夜9時頃までに、上で挙げた消化のよい夕食を済ませましょう。飲み物はアルコール以外なら、お好きな飲料を飲んでかまいません。体調を整えるため、睡眠のさまたげとなる遅い時間のコーヒーやお茶などカフェイン摂取は控えたほうがよいでしょう。検査当日は、朝起きたら水分補給のみ。食べ物は口にしないでください。
胃内視鏡検査の食事制限プラン(午前検査編)
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検査3日前〜
暴飲暴食せず、ふだんどおりの食事
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検査前日:夕食
消化のよい夕食
例:おかゆ 豆腐の味噌汁 タラの塩焼き
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検査当日:朝食
水や白湯、薄めのお茶、スポーツドリンク、透明な色の炭酸水
午後に検査を予約している方
胃内視鏡検査は、少なくとも検査6時間前までに食事を済ませる必要があります。検査が午後からの場合、朝食は予約時間から逆算して6時間以上前に消化のよい食事をとりましょう。昼食は絶食しますが、水分は摂取していただいてかまいません。
胃内視鏡検査の食事制限プラン(午後検査編)
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検査3日前〜検査前日
暴飲暴食を避けて、ふだんどおりの食事
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検査当日:朝食
消化のよい朝食
例:トースト+はちみつ+具なしスープ
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検査当日:昼食
水や白湯、薄めのお茶、スポーツドリンク、透明な色の炭酸水のみ

大腸内視鏡検査の食事制限プラン
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)では、食べ物が腸内にわずかでも残ってしまうと、内視鏡のレンズが汚れたり観察時のさまたげになるなどして検査に時間がかかり、精度も下がってしまう可能性があります。そのため、検査3日前から食事制限を行う必要があります。検査前日は午後8時ごろまでに食事を済ませ、それ以降は水分補給のみにして早めに就寝しましょう。
大腸内視鏡検査の食事制限プラン
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検査3日前:3食
食物繊維や脂肪が少ない消化のよい食事。アルコール・カフェインは控えめにしましょう。
朝食
例:食パン 目玉焼き コーンポタージュ
昼食
例:やわらかめの白いご飯・豚もも肉の冷しゃぶ・じゃがいもの味噌汁
夕食
例:たまごと白米の雑炊・冷奴(薬味なし)・鮭の塩焼き(皮なし) -
検査前日:夕食
消化のよい夕食
例:温玉入りうどん
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検査当日:朝食
水や白湯、薄めのお茶、スポーツドリンク、透明な色の炭酸水のみ
検査当日の水分補給と飲んではいけない飲み物
内視鏡検査では検査前の絶食が必要ですが、水や薄めのお茶、スポーツドリンク、透明な色の炭酸水は、当日でも摂取することができます。とくに暑い時期は脱水症のリスクがあるので、こまめな水分摂取を心がけましょう。大腸内視鏡検査では、腸管洗浄剤(下剤)を2リットルほど服用しますが、体に吸収されないので脱水状態になりがちです。水分は意識してとるようにしましょう。
ただし、牛乳や飲むヨーグルトなどの乳飲料、コーヒー、コーラ、ジュース、スムージーなど脂質や繊維、色素が多く含まれる飲料は、観察のさまたげとなり、検査の精度に影響することがあるので避けてください。空腹に耐えられない場合や低血糖予防のために、透明な飴や氷砂糖をなめるのは大丈夫です。ゼリーやプリン、グミは、腸に残りやすいのでNGです。
アルコールを飲む・喫煙される方、お薬・サプリメントを服用されている方
ふだんから飲酒量が多い方やたばこを吸われる方、お薬やサプリメントを服用されている方は、検査前の摂取を調整していただく場合があります。
アルコール・たばこについて
検査前日から禁酒・禁煙は必須です。医療機関によっては、検査の1週間〜3日前から禁酒・禁煙を指示する場合もあります。
アルコールは、刺激で胃や腸の粘膜を傷つける可能性があり、血管拡張作用があるため、検査中に出血するリスクが高まります。また、脱水症状を起こしたり、麻酔の効き目に影響を及ぼしたりすることもあります。
たばこは血管を収縮させる作用があるため、胃や腸の血流が悪くなったり、胃粘膜分泌が増えて検査に支障をきたしたりすることがあります。また、のどが敏感になり、胃内視鏡検査でえずきやすくなることもあります。
お薬・サプリメントについて
内視鏡検査を受ける際は、ふだんから飲んでいるお薬について、医師や看護師に事前にお伝えください。常用内服薬がわかる資料(処方箋やお薬手帳など)を持参して提示しましょう。
常用内服薬は、中止する薬と、中止してはいけない薬があります。下記に例を示しますが、自己判断で継続・中止せず、必ず医師や看護師にご確認ください。
内視鏡検査で注意を要する主な常用内服薬
血圧を下げるお薬(降圧薬)
内視鏡検査前は、緊張などのストレスでふだんより血圧が高くなる可能性があります。そのため、検査当日も常用している降圧薬を内服してください。
血液をサラサラにするお薬(抗凝固剤・抗血小板薬)
服用している間は出血しやすい状態になるので、処方を出している主治医に服用の可否を確認してください。
血糖値を下げるお薬(糖尿病の薬、インスリン)
絶食による低血糖症は命を危険にさらすリスクがあります。検査当日の糖尿病薬の服用、あるいはインスリンなどの皮下注射は中止が指示されます。
その他の薬
抗不整脈など心臓病のお薬、抗てんかん薬、喘息の薬、ステロイドなどは中止すると、症状の悪化リスクがあります。これらの薬を服用している方は、医師に確認のうえ、服用する必要があります。
いずれのお薬についても、自己判断での服用や中止はせず、処方した医師に相談のうえ、検査にあたる医師にもご報告ください。ここに挙げていないお薬についても、必ず医師に確認しましょう。
サプリメントの摂取についても、医師に必ず確認してください。検査に影響を与える成分が入っている場合、摂取中止となることがあります。サプリメントは「食品」の扱いなので、摂取可能な場合でも、食事と同様に検査前日までに飲み終えましょう。