下腹部の痛み・張り

下腹部に痛みや張りといった症状をもたらす原因は、消化器の病気によるものが考えられます。
このページでは、痛みや張りを生じる疾患の中から、大腸や小腸などの代表的な消化器疾患をご説明します。

下腹部の痛み・張りがあるときに考えられる消化器疾患の例

虫垂炎

虫垂炎は、虫垂(盲腸)の入り口が感染や便の固まりなどによってふさがれ、内部で細菌が増え炎症を起こすものです。
痛みの移動が特徴です。まず、みぞおちやおへその周りの痛み、吐き気、食欲低下が起こります。これは虫垂管で生じた痛みが神経を伝ってみぞおちやおへその周りで鈍痛を起こすためです。さらに数時間から半日で、痛みが右下腹部へ移動します。虫垂炎が悪化することで腹壁に炎症が広がることが理由です。重症化すると、動くだけで腹部に強い痛みが走ります。
初めに起こるみぞおちやおへその周りの痛みを、食べ過ぎなどによる痛みと間違える場合があるため、注意が必要です。

大腸憩室炎

大腸憩室症自体はめずらしい疾患ではありません。日本人では右側の結腸に憩室のある人が多いですが、近年は左側の結腸に憩室が生じる例も増えています。その大半は症状がなく経過しますが、大腸憩室に便がたまったまま長時間が経つと、憩室内で細菌が増殖し炎症が生じます。急な腹痛や発熱などが特徴です。
炎症が強まると、腸管に穴が開いたり膿瘍ができたりすることがあります。

急性腸炎

下記に挙げるウイルスや細菌、その他の原因で大腸や小腸に炎症が生じ、刺すような痛み、下痢、嘔吐などが起こります。
原因として最も多いのはウイルス感染によるものです。

急性腸炎の要因

ウイルス ノロウイルス、ロタウイルス
細菌 病原性大腸菌(O-157など)、ブドウ球菌、カンピロバクター、サルモネラ菌、腸炎ビブリオなど
非感染性腸炎 薬剤性(特に抗菌薬)、食品中の毒素(貝類、キノコ類、山菜など)

便秘

大腸にたまった便やガスが腸を圧迫することで痛みが生じることがあります。主な症状は下腹部の痛みや張りですが、吐き気や嘔吐が見られることもあります。
原因の多くは不規則な生活や食事、運動不足、ストレスといった生活習慣とされますが、大腸がん、クローン病、腸閉塞などの消化器疾患が腸の炎症や通過障害を引き起こして便秘になることもあります。

大腸がん

がんそのもので痛みが生じるのではなく、がんが腸管の通りをさまたげるために痛みが生じます。痛みが持続することはまれで、多くは腸管の動きに伴う断続的な痛みです。
盲腸や上行結腸では便の性状が液状なので、がんが生じても便通の異常はほとんど起こりません。下行結腸やS状結腸では便は固形化してきますが、早期はがんが小さいため症状がないことがほとんどで、痛みが起こるのは進行してがんが大きくなり便通をさまたげるようになってからです。大腸がんは早期発見・早期治療で生存率が大きく向上するため、大腸がん検診が推奨されている40歳以上の方は定期的に大腸がん検診を受けましょう。


大腸の区分

過敏性腸症候群

ストレスによって不安な状態になると、腸の収縮運動が激しくなり痛みを感じやすい知覚過敏の状態になります。
腹部の痛みや不快感が繰り返し起こりますが、排便により症状はやわらぎます。張りが生じることもあります。

鼠径ヘルニア嵌頓(そけいへるにあかんとん:脱腸)

鼠径部の筋膜が弱くなることで内臓が飛び出し、鼠径部(そけいぶ:足の付け根部分)にふくらみができます。不快感や違和感、痛みが生じます。
この病気には、先天性と後天性があります。先天性は乳児期から発症しますが、後天性は立ったり座ったりするときの鼠径部への圧力や加齢により筋膜が弱まることで発症します。

専門の医療機関で診察・検査を受けましょう

このページでは消化器の病気についてご説明をしましたが、下腹部の痛みや張りは、消化器疾患以外にも、婦人科系疾患、泌尿器疾患、心因性のものなど、さまざまな原因が考えられます。
いつもと違う症状が長引く場合は、専門の医療機関で診察や検査をしてもらいましょう。医療機関では、症状の出ている部位や症状の種類、発症期間などを確認し、必要な検査を実施していきます。

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