おなかの病気・がんを知る

事前に知っておきたいがん検診のメリット・デメリット

がん検診のメリット

がん検診を受けることで得られる最大のメリットは、がんを無症状のうちに早期発見・早期治療につなげられることにあります。ただし、がん検診にはメリット・デメリットがあり、やみくもに何度も受ければよいわけではありません。まず、がん検診のメリットは、大きく下記の4つが挙げられます。

メリット1:早期発見・早期治療で命を守る

厚生労働省が推奨し、多くの自治体で行っている対策型検診の対象となる胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんは、国内でも罹患患者数・死亡者数が多く、加えて、有効な治療法も確立しています。このため、早期発見・早期治療できれば、5年後の生存率は8割以上にのぼります。

メリット2:治療負担を軽減する

がん検診を定期的に受けることで、早期治療につなげることは「二次予防」(病気の重症化を予防すること)にあたります。多くの場合、がんが早期であるほど、治せる確率は高まります。また、治療も軽くすむことが多いので、身体的・時間的・経済的負担はより低くなることが一般的です。

メリット3:がん発病の予防につながる

がん検診では早期がんが見つかるだけでなく、ポリープや潰瘍など、がんになる前段階の病変が見つかることがあります。こうした病変は医師と相談して経過観察や治療などの処置を行うことで、将来がんになることを防げる可能性が高まります。

メリット4:安心して生活できる

がん検診を受けて「異常なし」と判定されれば、安心して生活ができます。推奨されるがん検診を受けることは、毎日をすこやかに過ごす秘訣の一つとも言えます。また、一度受けて終わりではなく、定期的にがん検診を受診して、安心を継続していきましょう。

がん検診のデメリット

デメリット1:がんが100%見つかるわけではない

技術はめざましく進化していますが、多くの検査と同様に100%の精度ではありません。がんが小さすぎたり、見つけにくい場所・形状だったりすると、検査を受けても見逃されてしまうことがあります。

実際には「がんである」(陽性)のに、「がんではない」(陰性)と判定されることを「偽陰性」といいます。

デメリット2:がんがないのに「がんの疑いあり」とされる

実際はがんがないのに、がんの疑いありと判定されることがあります。これを「偽陽性」といいます。この場合、精密検査を受けることになりますが、本来は受ける必要がない検査が増えることで負担が増します。がん検診は、がんの疑いがある人を広く拾い上げて、その中から精密検査で確定診断を下す仕組みです。このため、偽陽性をゼロにすることは難しいとされています。

デメリット3:不必要な治療や検査を招く

検診で見つかるがんの中には、進行がんにならず命を脅かすことのないがんもあります。今のところ、このようながんを早期の段階で判別することはできません。このため、いったん見つかった早期がんは治療が行われることも多く、結果的に「過剰診断」となるケースも考えられます。

デメリット4:検査が体に負担をかけることがある

検査を受けることで、体に負担をかけることがあります。例えば、X線の放射線被ばく、バリウムの誤嚥や腸閉塞、内視鏡による出血や穿孔(せんこう)などのリスクがあります。

日本人のがん検診受診率

国が推奨する対策型検診(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)は、どのくらいの人が毎年受診しているのでしょうか。日本における対策型検診全体の受診率は4〜5割程度で、対象年齢の半分程度しか検診を受けていないのが現状です。

日本人に受けてほしい「がん検診」とは?
男女別 がん検診受診率(2022年) 国民生活基礎調査より

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」をもとにオリンパス株式会社作成

ちなみに、日本は先進各国と比較して、がん検診受診率が低いとされています。乳がん検診の受診率は、欧米では70%以上を達成している一方、日本ではその半数程度です。また、日本人の罹患数が最も多い大腸がんについても、アメリカ・ドイツ・オランダなどと比べて受診率が低い傾向にあります。下記グラフは一部のOECD加盟国の大腸がん検診の受診率データです。

大腸がん検診 受診率の国際比較

「がん検診を受けない」理由とは?

なぜ、日本ではがん検診を受けない割合が高いのでしょうか。内閣府が行った「がん対策に関する世論調査」(2023年)によると、がん検診に行かない理由、受けない理由として挙げられたのは、多い順に「心配なときはいつでも医療機関を受診できる」「費用がかかり経済的にも負担となる」「受ける時間がない」でした。

がんは進行するまで症状がないことがほとんどです。ただ、上記の調査結果から、がん検診は「自覚症状が出る前のがんを早期発見するチャンス」であること、それにより「時間的・経済的負担が軽減される」という、がん検診の正しい知識が十分に浸透、理解されていないことが見えてきました。また、がんにどのような印象を持っているかを聞いた質問では、「怖い印象を持っている」「どちらかといえば怖い印象を持っている」と答えた人が9割にのぼりました。検査・治療技術の進歩で完治できるがんが増えていることなど、がんに関する正確な最新情報に触れておくことも大切です。

がん検診推進の取り組み

現在、日本人の2人に1人ががんになり※1、男性で4人に1人、女性で6人に1人ががんで亡くなるといわれています※2。がんでの死亡率を下げるために重要なのは、がん検診を受けることです。このため、厚生労働省は職場の健康診断にがん検診を組み込む職域検診の法定化も検討しています。また、一部の対象者に「検診手帳」「検診無料クーポン」を提供するがん検診推進事業も行っています。

「健康だから、がん検診は意味ない」ではなく、健康に過ごせるうちこそ、がん検診を受けるメリットは大きいのです。対象年齢になったら、ご自分のため、そして、大切な人のためにも、がん検診の受診をご検討ください。

どのぐらいかかる?気になるがん検診の費用
※1

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」2020年

※2

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」2022年

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