黄疸(おうだん)

黄疸とは、皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状です。血液中のビリルビン(黄色の色素)※が過剰になり、皮膚や粘膜に沈着した状態で、全身にかゆみを生じることもあります。
ビリルビンは肝臓で代謝されると、胆汁に含まれて便とともに体外に排泄されます。さまざまな原因で便からビリルビンが排泄されなくなると、尿中に排泄されるビリルビンの量が増えて尿の色が濃くなり、便の色が薄く(白っぽく)なります。ビリルビンには直接ビリルビンと間接ビリルビンがあり、前者は胆汁の排泄障害や肝臓の組織障害などで上昇し、後者は溶血や先天的な原因で上昇するケースがあります。

* 寿命を迎えた赤血球は脾臓(ひぞう)で分解されて、成分であるヘモグロビンから水に溶けないビリルビンが作られます。その後肝臓に運ばれ水に溶けるビリルビンに処理され、胆汁に含まれて胆管を通って十二指腸に流れ、便とともに体外に排泄されます。

黄疸の症状

☑皮膚の黄味が増す
皮膚の黄味が増す

☑白目の部分が黄色くなる
白目の部分が黄色くなる

☑尿の色が濃い

☑便の色が薄い

黄疸が生じるときに考えられる消化器疾患の例

膵臓がん

膵臓がんの多くは、膵液が通過する膵管に発生します。上皮細胞の異形成や過形成から発がんし、浸潤がんへ進展していくと考えられています。発生が多い年代は50〜70歳代で、特に高齢男性に多いがんです。
初期は無症状であることが多く、進行すると上腹部痛、体重減少、黄疸の症状が現れます。上腹部痛は最も多くみられる症状で、食事とは関係なく、背中の痛みや夜中の腹痛などが激しく続くのが特徴です。生じる黄疸は、膵臓がんが胆管をふさぐことでビリルビンが体内にたまる閉塞性黄疸です。

胆道がん

肝臓から十二指腸までの胆汁の通り道を総称して「胆道」といいます。胆道に発生するがんは、大きく分けて胆管がんと胆のうがんがあります。さらに、発生した部位によって分類されます。
胆管がんの90%は、閉塞性黄疸を生じます。閉塞性黄疸とは、がんによって胆管がふさがれて胆汁が逆流して発生する黄疸で、白目の部分のほかに手のひら、口の中、皮膚が黄色くなり、尿は褐色、便は灰白色になります。
胆のうがんの初期はほぼ無症状ですが、胆管に浸潤するまで進行すると、黄疸、わき腹の痛み、体重減少、しこりを生じます。

胆石症、総胆管結石症、胆管炎

胆石とは、胆のうや胆管内にできた結晶です。胆のうに胆石があるときは胆のう結石症(胆石症)、胆管にあるときは総胆管結石症、肝臓内の胆管にあるときは肝内結石症といいます。最も多いのは胆のう結石症です。胆石が胆のうにあると無症状ですが、胆管をふさぐと背中などの周期的な痛み、吐き気や嘔吐が起こります。そこから感染を起こすと、発熱、悪寒、黄疸にいたります。また、自己免疫学的機序が推察され、胆管に慢性の炎症を起こす原発性単純性胆管炎や胆管に繊維性狭窄をきたす原発性硬化性胆管炎などの疾患も、黄疸の原因となります。

急性ウイルス性肝炎

肝炎ウイルスに感染することで肝臓に炎症が起こる病気です。食欲不振、吐き気、嘔吐、倦怠感、発熱、右上腹部の痛み、肝臓の機能低下による黄疸などの症状が現れます。肝炎ウイルスは5種類ありますが、急性肝炎で最も多いのはA型肝炎ウイルスで、次いでB型肝炎ウイルスです。

アルコール性肝疾患、薬剤

長期間の飲酒が原因で肝臓が損傷することで起こります。食欲不振、だるさ、発熱、黄疸などが主な症状ですが、黄疸はゆっくり進行します。各種の薬物が原因で、肝内胆汁うっ滞や肝細胞障害をきたし、黄疸が起こることがあります。

肝硬変

肝臓の細胞が炎症や薬物などが原因となり破壊と再生を繰り返すことで繊維化が進み、組織が硬く機能を失った状態となります。症状として手のひらが赤くなる、胸のあたりに血管が浮き出る、疲労感、倦怠感、黄疸などが生じます。黄疸が生じるのは、肝臓の機能が低下して、ビリルビンが血液中で増加するためです。また、肝臓の門脈圧が亢進すると食道粘膜下にある静脈の壁が膨れ、血管が瘤(こぶ)のようになり食道静脈瘤が発生します。静脈瘤自体は無症状ですが破裂すると大出血をきたすことがあります。

新生児黄疸

大人の黄疸はさまざまな疾患が背景に考えられますが、新生児の黄疸で最も多いのは生理的黄疸です。新生児は、赤血球の分解が早いためビリルビンの生成が一時的に増加する、あるいは、肝臓が未成熟でビリルビンの排泄が遅れることが原因で起こります。生理的黄疸は生後1週間以内に治るものですが、生後2週間を過ぎても黄疸が残る場合は原因を調べる必要があります。

専門の医療機関で診察・検査を

黄疸そのものは深刻な症状を引き起こしませんが、原因となる疾患が潜んでいる可能性があります。黄疸が現れた場合、できるだけ早く医療機関で診察・検査を受けましょう。高齢者では、こうした兆候が軽い、あるいは自覚していないケースもありますので、まわりの人による観察も大切です。
検査では、血液検査で肝臓のダメージを確認し、必要に応じて超音波、CT検査、MRI検査などの画像診断を行います。内臓の異常が疑われるときは、内視鏡検査や生検を実施します。治療については、黄疸そのものを解消する治療法はなく、黄疸の原因疾患に対する治療が行われます。

参考:臨牀消化器内科編集委員会(編). 臨牀消化器内科 2023 Vol.38 No.3

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