便秘・下痢

便秘や下痢は、日常生活のなかでしばしば起こります。
便秘にはさまざまな原因が考えられます。運動不足や腹筋力の低下、水分・食物の摂取不足、極端なダイエット、ストレスによる腸の働きの低下などが原因で起こる場合のほか、消化器の疾患が原因となって起こる場合があります。
下痢にもさまざまな原因が考えられます。暴飲暴食、ストレス、細菌やウイルスなどによる食中毒、腸が水分を吸収する力が低下することで起こる場合のほか、消化器の疾患が原因となって起こる場合があります。
便の状態を判断する際には、「ブリストル・便形状スケール」という基準が用いられます。


ブリストル・便形状スケール

図の1、2が便秘、3~5が正常便、6、7が下痢の状態です。排便をしても残便感がある場合は便秘とされます。また、下痢と便秘は正反対の症状のようですが、疾患によってはそれらが交互に起こる場合があります。
便秘や下痢が起こる疾患にはさまざまなものがありますが、ここでは消化器の疾患から代表的なものを挙げます。

便秘や下痢が起きる代表的な消化器の疾患

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、消化器に特に異常がないにもかかわらず腹痛や腹部膨満感を伴う便通異常が起こる疾患です。腸管の運動が過剰になることや、刺激(ストレス、飲酒、下剤など)に対する反応が過敏になることが原因と考えられています。
便通異常は「慢性下痢型」「不安定型」「粘液分泌型」の大きく3タイプに分けられます。

慢性下痢型 緊張や不安があると激しい下痢の症状が現れる
不安定型 腹痛や腹部の不快感とともに便秘と下痢を数日ごとにくり返す。腹部が張って苦しく、排便しようとしても出なかったり、出たとしてもごく小さな便しか出てこなかったりする
粘液分泌型 強い腹痛が続いた後に大量の粘液が排出される

大腸がん(進行がん)

早期の大腸がんは、ほとんどが無症状です。進行すると便の通り道が狭くなり、便秘や下痢、便が細くなる、残便感、おなかが張る、などの症状が起こることがあります。さらに進行すると腸閉塞となり、便が出なくなります。
がんができる部位によって、便通異常の症状に違いがあります。

大腸の右側(盲腸、上行結腸、横行結腸)のがん 腸の内容物が液状であり、かつ便の通り道が広いため、便通異常の症状は少ない
大腸の左側(下行結腸、S状結腸、直腸)のがん 腸の内容物が固形化しており、かつ便の通り道が狭いため、便秘・下痢などの症状が起こる

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらん(ただれ)や潰瘍ができる原因不明の炎症性腸疾患です。厚生労働省が定める指定難病(原因不明で治療法が確立していない)の一つで、医療費助成の対象となっています。
症状としては、主に血便、粘血便、下痢あるいは血性下痢が生じます。軽症の場合血便はありませんが、重症化すると多量の血便が出たり頻繁に水のような下痢が出たりします。
また、症状はずっと続くのではなく、下痢や便秘を頻繁に繰り返す活動期と症状が現れない寛解期があるのが特徴です。

クローン病

クローン病も潰瘍性大腸炎と同じく炎症性腸疾患であり、厚生労働省が定める指定難病の一つで医療費助成の対象です。
主な症状は、下痢、血便、腹痛、発熱、体重減少、全身倦怠感、貧血などです。高度の炎症が腸管に起こっている場合や狭窄を伴う場合は便の通り道が狭くなり、便秘や腸閉塞を起こすことがあります。
口のなかから肛門の周囲まで消化管のあらゆるところに病変ができる可能性がありますが、特に小腸の終わりから大腸に移行するあたりに頻繁に発生します。

便秘や下痢が続く場合は診察を受けましょう

便秘や下痢といった症状が継続して起こる疾患には、これまで挙げたもの以外にもさまざまなものがあります。症状だけで疾患を特定することは難しいので、医療機関で血液検査や超音波、大腸内視鏡などの検査を実施していくことになります。
また、大腸がんについては、早期発見・早期治療が大切です。大腸がんによる死亡率は40歳を過ぎたあたりから上昇しますので、40歳以上の方は定期的に大腸がん検診を受けましょう。

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