背中の痛み

背中の痛みの原因は、一般的に筋肉痛、骨の異常や神経痛、ストレスなどが考えられますが、中には内臓の疾患が原因となる場合もあります。ここでは、背中に痛みを生じることがある消化器系の疾患をまとめました。

内臓疾患が疑われる背中の痛み
内臓疾患が疑われる背中の痛み

背中が痛いときに考えられる消化器疾患の例

食道アカラシア

食道の蠕動(ぜんどう)が障害されて、胃に近い食道の筋肉が十分開かず、食物の通過障害や食道の拡張が起こる原因不明の食道の機能異常です。

固形物だけでなく液体もうまく飲み込めなくなる症状が徐々に進行し、嘔吐が起こります。特に夜間や睡眠中に多くみられます。胸の痛みや背中の痛みがでて、症状の進行にともない、体重が減少していきます。

胃潰瘍十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は、胃・十二指腸粘膜の下にある筋層が傷ついた状態です。食後しばらくすると、みぞおちに痛みを生じ、背中の痛みが起こります。吐き気や嘔吐、食欲不振、体重減少をともない、進行すると吐血などの症状が現れることもあります。

急性膵炎

突然起こる膵臓の炎症性疾患です。原因は膵臓の浮腫ですが、まれに膵臓の血流障害を起こし、重症化します。症状は、上腹部に激しい痛みが急に起こります。また、膵臓の位置が背中に近いため、腹部から背中に貫通するような痛みを感じることもあります。このほか、吐き気や嘔吐、発熱をともなうこともあります。

慢性膵炎

慢性膵炎は膵臓の細胞が少しずつ破壊されていく病気です。それによって膵臓の形が変形・線維化し、主膵管の狭窄・閉塞を生じます。食事をしたり、アルコールを摂取したりすると上腹部の鈍い痛みや背中の痛みを慢性的にもよおし、下痢や体重の減少といった症状が現れます。

膵臓がん

膵臓がんの多くは、膵液が通過する膵管に発生します。上皮細胞の異形成や過形成から発がんし、浸潤がんへ進展していくと考えられています。50〜70代、特に高齢男性に多いがんです。
初期は無症状であることが多く、進行すると上腹部痛、体重減少、黄疸(おうだん)の症状が現れます。上腹部痛は最も多くみられる症状で、食事とは関係なく、背中の痛みや夜中の腹痛などが激しく続くのが特徴です。生じる黄疸は、膵がんが胆管をふさぐことでビリルビン※が体内にたまる閉塞性黄疸です。

※ 寿命を迎えた赤血球は、脾臓(ひぞう)で分解されて成分であるヘモグロビンから水に溶けないビリルビンが作られます。その後肝臓に運ばれ水に溶けるビリルビンに処理され、胆汁に含まれて胆管を通って十二指腸に流れ、便とともに体外に排泄されます。

胆のう炎

急性胆のう炎と慢性胆のう炎があり、急性胆のう炎は胆のう管が結石で閉塞し、炎症をおこします。細菌感染が加わると重症化することもある危険な疾患です。慢性胆のう炎は、繰り返される炎症によって胆のう壁が厚くなり、胆のう自体が収縮していきます。
症状は、食後に右上腹部や背中の激しい痛みが起こり、吐き気、嘔吐がともないます。一時的な閉塞では、軽いみぞおちの痛みや吐き気が起こりますが、持続的になると右上腹部の痛みが強まります。発熱、右肩やその周辺の痛みが現れることもあります。

胆石症、総胆管結石症

胆石とは、胆のうや胆管内にできた結晶です。胆のうに胆石があるときは胆のう結石症(胆石症)、胆管にあるときは総胆管結石症、肝臓内の胆管にあるときは肝内結石症といいます。最も多いのは胆のう結石症です。
胆石が胆のうにあると無症状ですが、胆管をふさぐと背中などの周期的な痛み、吐き気や嘔吐が起こります。そこから感染を起こすと、発熱、悪寒、黄疸にいたります。

急性虫垂炎(盲腸)

異物や糞石などが原因で、虫垂内に閉塞が起こり、二次的に細菌感染を起こす化膿性の炎症です。
必ず生じる症状は、腹痛です。上腹部またはおへそ周辺で突然痛みが始まり、時間とともに右下の腹部に移ってきます。嘔吐、吐き気、おならが出る、便が出ないなどの症状が現れることもあります。腹膜炎に進むと、お腹全体に強い痛み、発熱をきたすこともあります。虫垂の先端が背中側にくっついている場合は、歩行時に背中や右の腰に痛みやだるさをともなうこともあります。

専門の医療機関で診察・検査を

背中の痛みは、思わぬ内臓系の疾患がひそんでいる可能性があります。激しい痛みが続く場合、狭心症や大動脈解離など心臓・血管系の疾患の可能性もあります。また、高齢者であれば、背骨がつぶれたように折れてしまう椎体(ついたい)圧迫骨折なども考えられます。症状が該当する診療科がわからない場合は、かかりつけ医、あるいは総合診療科や総合内科、整形外科などの受診をお勧めします。

背中の痛みと診療科

動かすと痛い背中の痛み 整形外科
叩くと響く痛み 内科(泌尿器)
背中全体の痛み 内科(循環器・呼吸器・消化器)

参考:腹痛を「考える」会(著). 腹痛の「なぜ?」がわかる本

「こんな症状があるときは?―症状から考えられる疾患」一覧へ戻る

TO TOP