胃内視鏡検査の不安や苦痛の軽減につながる、知っておきたい5つの知識&対策

「胃カメラ*」と呼ばれることもある胃内視鏡検査。現代は静止した画像撮影ではなく、消化管内の様子をリアルタイムに映像でくわしく観察することができます。内視鏡は食道・胃・十二指腸の粘膜を細部まで観察できるので、わずか数ミリの病変を見つけることも可能です。50歳を過ぎると、胃内視鏡もしくはバリウムを用いた検診を2年に1回のペースで受けることが推奨されています。検査の知識を得て自分に合った方法を知ることは、受診のハードルを下げることにもつながります。経験者や未経験者の声を参考にしながら、事前準備や心がまえを確認していきましょう。

*「内視鏡」は「胃カメラ」と呼ばれることもありますが、厳密には、「胃カメラ」はチューブ状の管の先端に搭載されたフィルムカメラで胃の中を撮影する、歴史上の医療機器のことを指します。

胃内視鏡検査にまつわる3つの不安&疑問

検査を受けたことがない人に「胃内視鏡検査を受ける際に不安なこと」を質問したところ、次の3つが上位にランキングされました。

<未経験者の不安>
1位:内視鏡(胃カメラ)がスムーズに喉を通るのか、苦しいのではないか:43.8%
2位:検査中に嘔吐反射(えずくこと)等が起こってつらいのではないか:41.7%
3位:X線バリウム・内視鏡検査のどちらが自分に適しているのかよく分からない:26.5%

最も多い回答は「内視鏡(胃カメラ)がスムーズにのどを通るのか、苦しいのではないか」(1位)でした。胃粘膜には知覚神経があまりなく、「痛い」という感覚よりも「何か入っている」といった異物感、ものが詰まったような感覚のほうが強くなる傾向にあるようです。次に多かったのは「検査中に嘔吐反射(えずくこと)などが起こってつらいのではないか」(2位)。人間の体は、のどに異物が入ろうとすると吐き出そうとする嘔吐反応が起こります。軽減する方法もあるので、次で詳しく紹介します。
3位は「X線バリウム・内視鏡検査のどちらが自分に適しているのかよく分からない」との声。どちらも胃の検査ですが、方法やメリットが異なります。自分に合った最適な検査方法を選ぶポイントもあわせて説明します。

胃内視鏡検査の不安や苦痛の軽減につながる5つの事前知識&対策

①極細スコープ登場で負担軽減につながる可能性も

胃内視鏡検査では外径8~9mmの内視鏡が一般的ですが、最近では外径5~6mmと非常に細く、柔らかいスコープが登場しています。細くて柔らかい内視鏡であれば、身体への負担軽減につながるかもしれません。不安が強い人は医師に相談してみましょう。

②えずき(嘔吐感)の予防策は「体勢」

嘔吐反射である「えずき」は反射的に出るので、自分でコントロールするのはなかなか困難です。ただし、肩・首の力を抜いてゆっくり息を吐いて全身の力を抜き、おしりを後ろに引く姿勢をとると、えずきが起こりにくくなります。
また、検査中に唾液を飲み込もうとすると、えずきや咳込みが起こりやすくなります。唾液は顔の下に敷かれているペーパータオルにそのまま流して、口の外に出すようにしましょう。

③「口」が苦痛な人は「鼻」から挿入の選択肢もある

のどに内視鏡を入れる経口内視鏡検査に恐怖心や抵抗感がある人は、鼻から挿入する経鼻内視鏡検査を選択肢に入れてもよいかもしれません。

経鼻内視鏡検査は、検査中に会話もできて、内視鏡がのどの付け根を通らないため、嘔吐感がなく、苦痛が少ない検査方法と一般的にいわれています。ただし、人によっては鼻腔が狭くて挿入が難しかったり、痛みや鼻出血を伴うこともあります。

④麻酔や鎮静剤で苦痛や不安をやわらげる

検査は、のどまたは鼻に局部麻酔をして行われます。また、病変の一部を採取する生検などで検査時間が長くなる場合や、嘔吐反射などが強い場合、患者さんの不安が大きい場合などに鎮静剤を使用するケースもあります。医療機関の方針を確認し、不安がある方は医師に相談してみるとよいでしょう。

⑤X線バリウムと内視鏡検査の違いを知る

X線バリウム検査は、造影剤(バリウム)を飲んで胃をX線で撮影し、モノクロの写真をもとに診断を行う検査方法です。
一方、胃内視鏡検査は、胃の中を内視鏡先端のライトで照らしながら、粘膜を細部まで拡大して観察することができ、色も判別できます。このため、胃内視鏡検査は、初期の胃がんなどに見られるごく小さなびらん、色合いの変化を発見しやすいといわれます。
X線検査は比較的費用が安いことから、検診などで広く普及しています。最近では、胃内視鏡検査とX線検査から選択できる自治体や健康保険組合も増えています。

胃部エックス線検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査の比較

胃部X線検査(バリウム検査) 胃内視鏡検査
特徴1 胃の外側からX線を照射して、撮影した画像の陰影を観察 内視鏡の先端についた小型カメラで胃の中を直接観察
特徴2 胃全体の変形がとらえやすい 凹凸のない平坦な病変も、色の変化で観察できる
特徴3 X線の吸収が大きいバリウム液などの薬剤を入れ、画像の濃淡がはっきり出る状態にして撮影 検査時に疑わしい部位が見つかれば、組織採取(生検)を行う場合もある
特徴4 放射線被ばくはあるが、それによる健康被害はほとんどない 検査前に喉の麻酔を行うが、検査に伴う苦痛を感じることがある
検査費用 内視鏡検査に比べて安い傾向 X線検査に比べて高い傾向
検査時間 約5分 5~15分

経験者に聞いた!胃内視鏡検査に求めることとは?

検査を受けたことがある方に、胃内視鏡検査に求めることをお答えいただきました。

<経験者が求めること>
1位:鎮静剤を使用して、寝たまま(うとうとしたまま)受けたい:36.3%
2位:自分の検査画像を見ながら検査を受けたい:17.5%
3位:検査前の準備や前処置・麻酔や、検査中・検査後の一連の流れを知りたい:14.9%

「鎮静剤を使用して、寝たまま(うとうとしたまま)受けたい」(1位)という声が大多数を占めました。そして、2位には「自分の検査画像を見ながら検査を受けたい」という声も。一度経験すると、「せっかくなので自分の胃の中を見てみたい」という関心も生まれてくるのかもしれません。また、「検査前の準備や前処置・麻酔や、検査中・検査後の一連の流れを知りたい」(3位)という声も寄せられました。検査前から検査後の流れをつかめていないまま、検査当日を迎えた方も一定数いたことがわかりました。
これらの声から、検査前に知っておきたい3つのポイントを挙げます。

経験者が胃内視鏡検査に求める3つのポイント

鎮静剤を使用して、寝たまま(うとうとしたまま)受けたい

最近は、胃内視鏡検査に鎮静剤の使用を選択できる医療機関も増えてきました。鎮静剤使用が基本となる場合や、オプションで別途料金が発生する場合など、医療機関によって方針はさまざま。検査を申し込む際に確認しておくと安心です。鎮静剤を使用すると、意識が薄れてぼーっと眠ったような状態になるため、検査時の苦痛が軽減される効果が期待できます。ただし、効果が収まるまで1時間程度かかり、自動車や自転車での来院ができなくなるなど移動手段に制限がかかります。また、一定頻度で偶発症が生じるケースも報告されています。詳しくは、コラム「内視鏡検査と鎮静剤」をご参照ください。

自分の検査画像を見ながら検査を受けたい

胃内視鏡検査は胃粘膜をモニターの映像を見ながら進められます。医師からの説明を受けながら、ご自分の胃粘膜を鮮明な映像で見ることができる場合もあります。しかし、鎮静剤を使用した場合は、意識がぼんやりしているため、映像を見ることはできないとお考えください。胃の中を静止画で撮影しながら検査が進められます。

検査前日から検査後にかけての一連の流れを知りたい

胃内視鏡検査は、前日夕方から準備に入ります。夕食は午後9時までに軽めにとり、検査当日は食事・喫煙はNGです。常用薬を服用されている方は、事前に医師に相談しましょう。この間、水は飲んで頂いて大丈夫です。医療機関に到着したら、胃の中をきれいにする薬剤の服用、のどの局所麻酔などを行い、検査室に移動します。検査は5~15分ほどで完了します。
検査後は安静を保ち(鎮静剤の使用時は1時間程度)落ち着いたら医師から検査結果を聞きます。
より詳しい流れは、上部消化管内視鏡検査(経口挿入)の受け方|オリンパス おなかの健康ドットコム (onaka-kenko.com)でご覧いただけます。

調査データ
出典:胃・大腸がん検診と内視鏡検査に関する意識調査2024(オリンパス)
詳細はこちら

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