病気・がん胆道がん(胆管がん・胆のうがん)の治療と予防

治療:手術

手術を行うにあたり、CT検査や血管造影検査で、胆道のまわりの大きな血管にがんの浸潤(しんじゅん)がないこと、黄疸の値(ビリルビン値)が5mg/dl以下であることを確認する必要があります。

胆のうがんでは、腹腔鏡(ふくくうきょう)下切除術では胆汁が腹腔に漏れる危険があるため、基本的には開腹手術を行います。粘膜層までのがんはリンパ節転移の可能性もなく、胆のう摘出で根治(こんち)が可能です。実際はがんのできた位置や、浸潤リンパ節転移があるかどうかにより、切除する範囲が違ってきます。手術前の診断が重要な要素となります。

胆管がんは病巣(びょうそう)が限局されているように見えても、胆管壁に沿って、はうように浸潤して広がる性質をもつため、手術前の内視鏡検査と生検(せいけん)の結果が重要な情報となります。上部の胆管がんでは、胆管と周りのリンパ節のほかに、肝臓の一部も切除します。中部、下部の胆管がんは周りのリンパ節と膵頭(すいとう)十二指腸の切除を行います。

胆道とがん
胆道とがん


胆道がんの手術

治療:化学療法

現在、胆のうがんにおいては、根治(こんち)の可能性、手術の安全性から判断し根治手術を行います。

様々な理由で手術を選択できないケースでは、抗がん剤による化学療法の道を選択しますが、胆のうがんに特異的な抗がん剤治療は確立されていません。点滴投与のほか、カテーテルを動脈内に留置し抗がん剤を集中的にがんに投与することも試みられています。

化学療法イメージ

治療:放射線療法

胆のうがんの放射線療法には一般的な外照射のほかに術中照射や腔内照射が行われています。

術中照射は開腹手術の際、集中的に照射する方法です。腔内照射は黄疸のある患者さんに、体外から留置された胆汁のドレナージ用のカテーテルルートなどを利用して、がんの局所に集中的に放射線をあてる方法です。

治療:内視鏡による治療法(ドレナージ)

胆管がんの場合、胆管ががんによってふさがれてしまうと、胆汁が十二指腸に流れなくなります。胆道がんは切除手術が最善の方法ですが、早期発見することが困難なため、手術不可能な場合があります。このような時に、開腹手術をせずに、内視鏡を用いてたまった胆汁を排出できるようになりました。

乳頭(にゅうとう)、胆管、膵管で行う処置のため、膵炎や穿孔(せんこう)、出血、胆道炎などもまれに起こることもあります。

十二指腸乳頭(ファーター乳頭)の開口の確保:
まず、チューブを胆管に挿入したり、また胆石・胆汁を排出する為に、十二指腸乳頭の開口部を広げる必要があります。十二指腸乳頭開口の確保の方法として、主に2つの方法があります。

(1)内視鏡的乳頭括約筋(かつやくきん)切開術(Endoscopic sphincterotomy:EST):

内視鏡を十二指腸まで挿入し、胆管の出口にあたる乳頭部にEST用ナイフを挿入し、高周波を用いて切開し、ひろげる方法で胆汁が流れ出るようにします。


EST

EST用ナイフ
EST用ナイフ

(2)内視鏡的乳頭バルーン拡張術(Endoscopic papillary balloon dilatation:EPBD):

乳頭部を跨ぐようにバルーンダイレーターをおき、バルーンに生理食塩水などを注入して膨張させることで乳頭を拡張する方法です。


EPBD

EPBD用バルーンダイレーター
EPBD用バルーンダイレーター

胆管ドレナージ術:
胆管にたまった胆汁を排出するために、胆管にチューブを挿入します。挿入する経路により、いくつか方法があり、状態に応じて、方法を選択します。

(3)内視鏡的経鼻(けいび)胆管ドレナージ(Endoscopic nasobiliary drainage :ENBD):

総胆管結石(けっせき)で胆管炎や閉塞性(へいそくせい)黄疸をおこした場合に行われます。ドレナージチューブ(細い排出用の管)を用いて胆汁を鼻から体外に出す方法です。この方法は(1)胆汁の性状や量を把握できること、(2)チューブの取り外しが簡単なこと(3)洗浄が可能なこと(4)胆管の造影ができることなどのメリットがあります。


ENBD

ENBD用ドレナージチューブ
ENBD用ドレナージチューブ

(4)内視鏡的逆行性胆管ドレナージ法(Endoscopic retrograde biliary drainage:ERBD):

内視鏡的逆行性胆膵管造影法( Endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)を治療に応用したもので、胆管の十二指腸への出口である十二指腸乳頭へと内視鏡を用いてドレナージチューブ(細い排出用の管)を挿入していき、胆汁の流れを維持する方法です。


ERBD

ENBD用ドレナージチューブ
ERBD用ドレナージチューブ

予防

胆のうがんの40~80%に胆石が認められ、胆道がんと胆石には深い関係があることがわかってきました。特に胆道がんの人には、コレステロールを多く含むコレステロール結石(けっせき)を持っている例が多いといわれています。この関係は、高齢になるほど顕著になります。胆石が刺激となっておこる胆のうの炎症を長い間繰り返すことが、胆のうがんの発生につながるとも考えられています。

しかし、人間ドックや集団検診が進んだ現在、胆石を発見することが多くなりました。しかし、見つかる胆石のうち、50~70%は無症状性のものです。以前は胆石のために胆のう切除を行っていましたが、胆のうの機能を温存する方向になってきており、無症状性の場合は経過観察し、胆のう切除は行わなくなりました。これは、無症状性の胆石と胆のうがんとの関係が、まだはっきりと解明されてはいないためです。しかし、無症状性の胆石の20~30%は、2~3年後に発病するというデータもあり、最低6ヵ月に1度は超音波検査を受け、胆のうに異常がないか、がんの発生がないかを確実に調べることが大切です。

食生活イメージ

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