内視鏡について細径内視鏡と経鼻内視鏡検査

内視鏡の細いチューブの中には、(1)おなかの中の様子を撮影するためのレンズや撮像素子 (2)おなかの中を明るく照らすためのライト (3)体内の粘液や血液を吸引したり、組織の採取や処置をするための道具を出す管路 (4)水や空気を送り出すための管路など、検査や治療で必要となるさまざまな機能が搭載されています(図1)。

(図1)内視鏡先端部の構造の一例

(図1)内視鏡先端部の構造の一例

そのため、患者さんが呑み込みやすくなるように内視鏡の外径を細くするためには、多くの技術的な課題を解決する必要がありました。近年、幾多の技術革新により精密加工技術やデジタル画像処理技術がさらに向上したことで、現在では胃の内部の観察に適した画質を有する約5~6mm程度の細さの内視鏡が開発され、医療の現場で使用されています。この細径内視鏡は、外径が細いことで、口からの検査時に患者さんの苦痛を軽減することが期待される他、鼻から挿入する内視鏡検査(経鼻内視鏡検査)も可能となりました。

経鼻(挿入)内視鏡検査と経口(挿入)内視鏡検査

細径内視鏡による経鼻内視鏡検査では、検査中に会話をすることができる他、内視鏡が舌のつけ根を通らないため嘔吐感がなく、一般的に苦痛が少ない検査方法といわれています。一方で、鼻腔が狭い患者さんでは、鼻からの挿入が難しい場合や、痛みを感じたり鼻出血を伴ったりすることがあります。
また、経口内視鏡検査で一般的に使用されている外径8~9mm程度の内視鏡と比べ、画質や処置性能がやや劣るため、より精密な検査や治療を行う際には、ハイビジョン観察や高度な治療ができる内視鏡を用いて経口挿入による内視鏡検査が行われます。

このように内視鏡検査の目的に応じて、使用する内視鏡や挿入方法が使い分けられており、細径内視鏡の登場により内視鏡検査の選択肢が広がったといえるでしょう。それぞれの特徴を一覧表にまとめましたので、内視鏡検査を受ける際はそれぞれの特徴をよく理解して、不安や気になる点があったら医師に相談してみましょう。

経鼻内視鏡検査と経口内視鏡検査の特徴

  経鼻内視鏡検査 経口内視鏡検査
挿入経路 経鼻(鼻から)挿入
経鼻(鼻から)挿入
経口(口から)挿入
経口(口から)挿入
内視鏡の外径 5~6mm程度
5~6mm程度
8~9mm程度
8~9mm程度
内視鏡の画質 通常の検査では、十分な画質 より精密な検査に適した高画質
治療・処置
(組織採取や簡単な治療が対応可能)

(高度な治療にも対応)
麻酔(前処置) ・鼻の通りを良くする薬を噴霧した後、鼻に麻酔をかける。
・鎮静剤は使用しない。
・のどに麻酔をかける。
・治療のために検査時間が長くなる場合や反射が強い場合、患者さんの同意を得て鎮静剤を使用することがある。
検査中のつらさ ・嘔吐反射が少ない。
・鼻腔が狭い場合などでは、痛みを感じることがある。
・嘔吐反射がある。
※鎮静剤を使用した場合には、つらさが軽減される。
検査中の会話 ×
検査時の注意点/副作用 ・鼻腔が狭い場合、挿入できないことがある。
・鼻出血する場合がある。
※鎮静剤を使用した場合、稀に副作用が起こることがある※1
検査終了後の注意点 ・検査後に異常がなければ、すぐに帰宅できる。 ・検査後に異常がなければ、すぐに帰宅できる。
※鎮静剤を使用した場合、検査後1時間程度は、医療機関で安静にしている必要がある。また、検査当日は、車の運転等ができない。
検査の受け方 内視鏡検査の受け方:上部内視鏡検査(経鼻挿入) 内視鏡検査の受け方:上部内視鏡検査(経口挿入)
  • ※1 全国518施設が参加したアンケート調査では、2003年から2007年の5年間に、鎮静剤に関連して生じた偶発症は、0.0013%(12,563,287件中167件)であったと報告されています。

芳野純治 他, 消化器内視鏡関連の偶発症に関する第5回全国調査報告-2003年より2007年までの5年間-. Gastroenterol Endosc. 2010;52:95-103.

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