病気・がん小腸の主な病気

小腸の主な病気

小腸は全長が6m以上と長く口や肛門から離れたところに位置する消化管のため検査を行うことが難しく、これまで「暗黒の臓器」と呼ばれてきました。
近年、カプセル内視鏡などの検査機器や検査技術が向上し、内視鏡で小腸を観察できるようになったことで、小腸疾患の診断と治療が大きく進歩してきています。
ここでは、小腸に起こりうる主な病気について簡単に解説しています。

小腸腫瘍

発生頻度は消化管腫瘍全体の5%以下で、あまり多くありません。しかし、悪性度は高く、2/3は悪性腫瘍といわれています。悪性腫瘍に対しては主に手術が行われますが、手術ができない場合や転移性の腫瘍では放射線治療や化学療法が行われる場合があります。

原因不明の消化管出血(Obscure Gastrointestinal Bleeding: OGIB)

下血や血便など、消化管からの出血が原因と考えられる症状があるものの、上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査のいずれでも出血部位が特定できない場合に疑われます。OGIBの出血源には、小腸のほか食道や胃、大腸などが挙げられます。出血が小腸で起きている疑いがあれば、小腸用の内視鏡検査(小腸カプセル内視鏡、小腸バルーン内視鏡)などで診断・治療を行うことができます。

クローン病

口腔から肛門周囲までの消化管のどの部位にも起こり得る、原因不明の炎症性腸疾患です。大腸や小腸が好発部位で、主に若者に発症します。腹痛や下痢、肛門部の痛みなどが生じますが、原因は不明です。根本的な治療法がないのが現状ですが、腸管の炎症を抑えるために栄養療法や薬物療法などが行われます。また、腸閉塞、穿孔(せんこう)、大量出血などが起こった場合は手術が行われます。

腸閉塞(ちょうへいそく)(イレウス)

腸閉塞(イレウス)は腸管が塞がれた状態(機械的イレウス)、あるいは腸管が麻痺した状態(麻痺性イレウス)をいいます。腸閉塞とイレウスは同じ病態とされてきましたが、区別されることもあります。特徴的な症状は腹部全体の痛み、便秘、嘔吐などです。絶飲食のうえ補液を行いますが、それでも症状が改善しない場合は手術が行われます。

腸重積(ちょうじゅうせき)

腸管の一部が後ろの腸管に引き込まれた状態になり、腹痛や嘔吐、血便などの症状がみられます。0~2歳の乳幼児によくみられ、原因が特定できないものがほとんどです。超音波やX線で病変部を観察しながら腸の重なりを戻したり、開腹手術や腹腔鏡下手術で病変を取り除いたりする治療を行います。

消化管間質腫瘍(GIST)

消化管の粘膜下に発生する粘膜下腫瘍の一種です。患者数は少ないものの、半数以上が無症状で、内視鏡検査で異常を指摘され発見されることがあります。初発の場合は手術により病変部を切除しますが、胃や腸に発生していて病変部がそれほど大きくない場合は、腹腔鏡下で切除することがあります。

吸収不良症候群

食物を消化・吸収する過程に障害が起こる病気の総称です。小腸のほか、消化・吸収に関わる胃、十二指腸、膵臓、肝臓、胆道などの臓器に何らかの病気が生じたり、臓器を切除したりした結果起こります。栄養障害が起こり、下痢や脂肪便、体重減少などさまざまな症状がみられます。原因となる病気の治療と同時に、個々の病態に応じた栄養管理を行います。

ベーチェット病

口腔内アフタ性潰瘍、皮膚症状、ぶどう膜炎、外陰部潰瘍の4つを主症状とし、症状が落ちつく寛解期と悪くなる活動期を繰り返す原因不明の病気です。主に小腸や回盲部に潰瘍を伴い、腹痛、下痢、下血などの症状が現れるものは腸管型ベーチェット病といいます。症状により治療法が異なり、薬物療法や手術が行われます。

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