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胃がん検診の胃部X線検査(バリウム検査)

胃がん検診として行われる胃部X線検査(バリウム検査)とは?

50歳から推奨される「胃がん検診」。胃がん検診には、胃部X線検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査(胃カメラ)の2種類の検査があります。このページでは、一般的に「バリウム検査」と呼ばれる胃部X線検査について紹介します。

「胃内視鏡」は“胃カメラ”と呼ばれることもありますが、厳密には、“胃カメラ”はチューブ状の管の先端に搭載されたフィルムカメラで胃の中を撮影する、歴史上の医療機器のことを指します。

胃部X線検査では、検査の前にバリウムを服用します。
空腹時の胃は、風船がしぼんだような状態で、そのままでは胃粘膜を診ることができません。また胃を膨らませても、胃は他の臓器に囲まれているので粘膜の状態まではっきり映りません。そのため、胃部X線検査を受ける人は、胃を膨らませる発泡剤(炭酸ガス)と、胃粘膜全体に付着させるバリウム(造影剤)を飲む必要があります。
バリウムはX線を吸収する性質があり、X線で照射されると白く映ります。胃壁に隆起した病変がある部位は、バリウムが付着しないため、黒く映ります。また、胃の粘膜に生じた潰瘍(炎症で粘膜の一部が欠損した状態)などの病変部位ではバリウムがたまり白く映し出されます。バリウム検査は、胃がんの早期発見に一定の有効性があるとされています。

胃部X線検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査(胃カメラ)の違い

胃部X線検査と胃内視鏡検査の二種類の検査方法から、検査の身体的負担や費用面、副作用などを比較して、ご自分に合った検査を選択しましょう。

自分に合った検査の選び方

胃部X線検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査(胃カメラ)は、方法や負担が異なります。以下の違いを参考にしていただき、ご自分が受けられそうだと感じる検査を選ぶのがよいでしょう。早期がんの発見率は胃内視鏡検査が高く、スキルス性胃がんのような表面粘膜に変化が出にくいがんは、胃部X線検査が発見しやすいケースもあります。

検査の精度

胃部X線検査は胃全体の画像診断ができるので、胃全体の変形や病変の形や大きさ、位置を把握できます。ただし、胃粘膜の色調やわずかな凹凸は判別しにくい傾向にあります。
胃内視鏡検査は胃粘膜を直接観察できるので、凹凸のない平坦な病変や色調の変化を発見しやすく、早期がんの診断につながりやすいとされています。疑わしい部位が見つかれば、検査中に組織を採取して生検を行うことができます。また、「NBI:Narrow Band Imaging(狭帯域光観察)」などの観察技術が開発されており、より早期での病変の発見につながっています。

NBI (狭帯域光観察) 画像強調内視鏡技術(IEE)

内視鏡検査での組織採取

身体への負担と検査時間

胃部X線検査では、放射線被ばくがわずかにありますが、それによる健康被害はほぼありません。また、検査後にバリウムの排出がうまくいかないと、便秘や腸閉塞を起こすリスクがあります。検査時間は3~5分程度です。
胃の内視鏡検査は、口や鼻から内視鏡を入れる際、痛みや違和感などを伴うことがあります。麻酔を使用することで苦痛をやわらげることも可能です。検査時間は5〜15分程度です。

費用と受診方法

市区町村が提供する住民検診の胃がん検診では費用の補助があり、X線検査(バリウム検査)は0〜1,500円、内視鏡検査は2,500円〜が目安です。勤務先などで定期健康診断として行われる職域検診では、費用は会社負担となる場合があります。人間ドックなどで受けると、X線検査は5,000〜15,000円程度、内視鏡検査は15,000〜20,000円程度が目安です。

起こる可能性のある副作用

X線検査では、バリウムが排出しきれていない場合、便秘や腸閉塞を起こすリスクがあります。また、バリウムや発泡剤にアレルギー反応を起こすケースもあります。
胃内視鏡検査は、一時的な吐き気、のどの違和感、出血などを起こすことがあります。また、麻酔や鎮静剤の影響で、眠気や吐き気・頭痛が起こったり、まれなケースとして、呼吸低下、血圧低下、アレルギー反応を起こすリスクがあります。鎮静剤を使った場合は、検査後1時間ほど安静が必要です。

高齢者への注意点

X線検査は、バリウムを飲むときに気管に入る誤嚥を起こすリスクがあります。高齢者や嚥下(えんげ)機能が低下した人は飲む際の注意が必要です。
内視鏡検査も、嚥下機能の低下、高血圧、心疾患や呼吸器疾患のある方、抗血栓薬を服用している方などは必ず事前に医師に相談してください。

妊娠中の方の注意点

X線検査は、バリウム服用による胎児への影響を考慮し、妊娠中の方は原則として受けることはできません。
内視鏡検査も、妊娠中は避けることが推奨されています。ただし、医師が必要と判断した場合や緊急性が高い場合は行われることがあります。

胃部X線検査(バリウム検査)の流れと受け方

ここでは、胃部X線検査の流れについて説明します。

検査前日〜当日

前日は、夕食を軽く済ませて、21時以降は絶食する(水・お茶はOK)。
検査当日は朝食をとらず、水分摂取は検査3時間前まで。胃が刺激されるため、タバコおよびアルコールは禁止。常用薬を服用されている方は、事前に医師に相談しましょう。

検査の流れ

  1. 1. 発泡剤を飲む(ここから検査終了まで、げっぷは我慢する)
  2. 2. 検査台に立ち、バリウムを飲む
  3. 3. 検査開始。技師の指示に合わせて、仰向けや横向きなど体を動かし、レントゲン撮影(所要時間は3~5分ほど)

胃部X線検査(バリウム検査)後の注意点と下剤の使い方

検査終了後は、バリウムを便で排出するために、処方された下剤と水を多めに飲む必要があります。下剤の効果は4〜5時間後に現れますが、人によっては2時間程度で便意を催すこともあります。バリウムを完全に排出しきるのは早くとも検査翌日なので、検査後は、頻繁にトイレに行くことを想定して行動することが大切です。バリウムを含んだ便は、白みがかった色です。便が白っぽい色から通常の茶色になれば、バリウムを出しきった状態です。
検査後6時間経っても便通がない場合、下剤を追加で服用します。バリウムが排出できないと、便秘になり、そこから腸閉塞や腸穿孔につながるリスクもあります。白っぽい便が出ない場合は、腸にバリウムが溜まっている可能性があるので、医療機関に連絡しましょう。また、腹痛や下痢、肛門痛は下剤で起こる通常の症状ですが、激しい腹痛や腹部膨満感がある場合も同様に受診しましょう。

胃部X線検査(バリウム検査)のよくある疑問Q&A

胃がん検診の胃部X線検査は、何歳から受ければよいですか?

50歳以上の方は、2年に1回の受診が推奨されています。

自治体や企業の胃がん検診(X線検査・内視鏡検査)は、50歳以上を対象に2年に1回受けることが推奨されています。X線検査は、40歳以上を対象に毎年受けられる場合もあります。

胃がん検診とは

胃部X線検査前にうっかり食事をとってしまったら?

受診する医療機関に報告し、検査日を変更しましょう。

胃内に食べ物が残っていると、検査で病変を判別することが難しくなります。検査前に食事をとってしまった場合は、食べた時間や内容を正確に医療機関に伝えましょう。食事の時間や内容によっては検査可能となる場合もありますが、原則は中止で、後日実施となることが一般的です。

授乳中でも胃部X線検査は受けられる?

はい。受けることができます。

授乳中の女性は胃部X線検査を受けることができます。ただし、下剤が母乳に移行する場合があるので、授乳中の方には母乳に移行しない下剤が処方されます。授乳中であることは予約時に医療機関に伝えておきましょう。

胃部X線検査を受けられない人はいる?

下記の状態にある方は受けることができません。

妊娠中もしくは妊娠の可能性がある方、アレルギー(バリウム過敏症)、透析中、腸閉塞や腸捻転、炎症性腸疾患など消化器疾患の治療中もしくは既往、重篤な心臓・呼吸器疾患の方などは、検査を受けることができません。また、75歳以上の高齢者は、バリウムが排出しにくいなどのリスクを考慮して慎重に行う必要があります。

胃部X線検査後、再検査となったら?

精密検査として、胃内視鏡検査を受けることが推奨されます。

胃部X線検査は疾患を調べるスクリーニング検査に近く、精密な診断や組織採取はできないため、より詳しく調べるには胃内視鏡検査を受ける必要があります。

胃がん検診のX線検査と内視鏡検査

まずはご自分が受けやすい検査を選ぶことが第一歩ですが、不安や迷いがある方は、かかりつけ医に相談したり、検診の問診の際に医師に相談したりしましょう。内視鏡検査はX線検査よりも検出精度が高いことから、近年は内視鏡検査を実施する自治体が徐々に増えています。そして、胃がんは早期発見(Ⅰ期)であれば98%が治ると言われています。定期的に受診して、健康維持につなげましょう。

全国がんセンター協議会 全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率(2011-2013年診断症例)に基づきます。

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