ファイバースコープの誕生

1960年代に入って、アメリカで開発された新素材「グラスファイバー」は様々な分野で注目をあびました。内視鏡分野でもいち早くこの素材に着目し、ハーショヴィッツ(Hirschowitz)らは曲がっていても光を端から端へそのまま伝えるガラス繊維の特性を内視鏡にとりいれることで、直接胃内を見ることに成功しました。このときから医師はリアルタイムで胃内を直接見ることができるようになったのです。しかし、これでは写真を撮ることはできませんでした。写真が撮れるようになったのは、「ファイバースコープ付胃カメラ」が登場した1964（昭和39）年のことでした。ついに待望の「目」が付いたのです。

目のない胃カメラの欠点がいっきに解決され、「ファイバースコープ付胃カメラ」では、胃内を直接観察できるうえ、動的な分析も可能になり、より高度な質的診断の道がひらかれた画期的な器具として、大きな注目をあびました。その後、次々に新発想、新技術、新材質の検討が加えられ、撮影も接眼部につけたカメラで行えるようになり、1975（昭和50）年頃には、胃カメラの時代は終わり、完全に「ファイバースコープ」に取って代わりました。

さらに、内視鏡の対象領域は「食道」「十二指腸」「大腸」「気管支」「胆道」などにひろがっていくことになります。診断に加えて、内視鏡を使っての「治療」が可能になってきたことで、内視鏡は医療現場では欠かせない地位を確立したのです。