大腸内視鏡検査を安心して受ける5つの知識&対策
大腸内視鏡検査を受けるまでに知っておきたい知識と対策をご紹介します。大腸内視鏡検査とは、内視鏡を肛門から大腸に挿入して、粘膜を詳しく観察する検査です。がん検診(便潜血検査)で要精密検査になった場合、血便や便通異常などの症状がある場合や大腸がんや他の疾患が疑われる場合に行われます。大腸がんは日本人に最も多いがんですが、早期発見・早期治療ができれば約99%*が完治します。この早期発見・早期治療に役立つのが大腸内視鏡検査です。ただ、食事制限や下剤で大腸を空にして、腸内に内視鏡を挿入するので、不安を感じる人も。これから受ける人や経験した人の声から、不安や体の負担を軽減する知識や対策をご紹介します。
*全国がんセンター協議会 全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率(2011-2013年診断症例)による
大腸内視鏡検査にまつわる3つの不安・求めることとは?
大腸内視鏡検査を受けることに、不安や恐怖心を感じる人は少なくありません。検査を受けたことがない人に具体的な不安を聞いたところ、下記が上位にランキングされました。
<検査を受けたことがない人の不安なこと・求めること>
1位:腸管洗浄剤(下剤)でトイレに何度もいくのが面倒:35.0%
2位:検査自体の具体的な流れを知っておきたい:33.3%
3位:検査中に尿漏れや便漏れを起こさないか不安:31.6%
1位は「腸管洗浄剤(下剤)でトイレに何度もいくのが面倒」という回答。大腸内視鏡検査では、病変の見落としを避けるために下剤で腸内をきれいにする前処置が必要です。下剤を飲んでトイレに行く回数はだいたい5~10回以上。透明な水様の便が出たら完了ですが、それでも「検査中に尿漏れや便漏れを起こさないか不安」(3位)と心配になる人も。また、どのように進められるのか「検査自体の具体的な流れについて知っておきたい」(2位)という声も多数寄せられました。
知っておきたい大腸内視鏡検査5つの事前知識&対策
意識調査からは、トイレの回数や排泄物の残り具合など不確定要素があることや検査内容がよくわからないことが、不安をふくらませていることがわかりました。できるだけ心身の負担を軽減するために、自分でできる対策や知っておきたい知識を5つ紹介します。
①前日の食事は「低脂肪・低たんぱく・低繊維」
腸管洗浄剤を飲んで、スムーズに便が出るかどうか効き目には個人差があります。便が出づらい人は、日頃から便秘気味だったり、検査前の食事の消化が進んでいないことが主な原因として考えられます。検査前日は夕方5時頃には食事を済ませ、消化の良い「低脂肪・低たんぱく・低繊維」の食事を少なめにとりましょう。肉や揚げ物、食物繊維の多い野菜や果物は避けて、白米、白米かゆ、そうめん、素うどん、バナナ、ヨーグルトなど消化に良いものがおすすめです。水やお茶などは検査の4時間前まで飲んでも大丈夫です。
②腸管洗浄剤(下剤)について相談をする
腸管洗浄剤は、洗浄力・内服量・味などが異なるさまざまなタイプがあります。薬剤入りのケースに約2リットルの水を加えて服用する液体タイプが主流ですが、大量の水分を取ることが苦手な人には錠剤タイプや濃縮タイプもあります。味を良くするために塩分が含まれる洗浄剤もありますが、腎機能が低下している人には不向きです。ご自分の体調、既往症・持病などをあらかじめ医師に伝えて相談してみましょう。
腸管洗浄剤
③自分に合った場所で服用する
意識調査によると、大腸内視鏡検査を受けた人のうち、腸管洗浄剤を服用した場所は自宅(58%)、医療機関(42%)という結果でした。
自宅での服用は、自分専用のトイレがある点で安心です。自宅から医療機関までの移動で漏れが心配な人は、紙パンツや生理用ナプキンなどを着用すると安心です。
医療機関での服用は、不安なときに医師や看護師にすぐ相談できるメリットがあります。腸管洗浄剤による一時的な副作用として、腹痛や下痢、吐き気、脱水症状などを起こす可能性があるので、体調に不安がある人や治療中の病気がある人は医師と相談して医療機関での服用も検討されるとよいでしょう。
④検査中の尿漏れ・便漏れはまれなケース
腸内にわずかに残った内容物は、内視鏡の先端についた吸引口から吸引しながら検査を進めるため、検査中や検査後に便を漏らしたりする心配はほとんどありません。また、尿漏れについても便と同時に排出されているため、検査中に尿漏れするケースはほぼありません。
⑤検査の流れを知っておく
内視鏡でどんな検査をされるのか知らないままですと、ますます不安はふくらみます。内視鏡検査では、局部麻酔ゼリーや潤滑ゼリーなどを使って外径11~13mmの内視鏡を肛門からゆっくり挿入し、大腸の一番奥の盲腸まで進めていきます。検査時間は10~15分ほどです。
個人差はありますが、成人の大腸は全長約150cm。腸の形状によって体の向きを変えながら内視鏡を進めます。盲腸に到達後、内視鏡を徐々に引き戻しながら、じっくり腸内を観察していきます。病変が見つかった場合、処置具を用いて組織採取やポリープ切除などもその場で行うこともあります。大腸には知覚神経がないので、切除にともなう痛みはありません。検査と治療が同時にできるのは、内視鏡検査ならではのメリットです。
経験者に聞いた、大腸内視鏡検査に求めることとは?
検査の経験者に、「大腸内視鏡検査について求めること」を聞きました。
<経験者が求めること>
1位:鎮静剤を使用して、寝たまま(うとうとしたまま)受けたい:27.9%
2位:細い内視鏡で検査してほしい:23.9%
3位:検査中の対応事項(体の体勢を変えるなど患者側が対応する事項)について予め知っておきたい:22.3%
最も多かったのは「鎮静剤を使用して、寝たまま(うとうとしたまま)受けたい」(1位)という声。また、違和感や痛みをより軽減できるように「細い内視鏡で検査してほしい」(2位)という要望も多く寄せられました。検査中は、医師や看護師から「横を向いてください」「仰向けになってください」などの指示を受けます。そこで「検査中の対応事項をあらかじめ知っておきたい」(3位)という意見も。体験談から生まれる声は、これから受ける人が心理的・身体的負担をできる限り軽減して臨む際の参考にもなります。次にポイントをまとめてみました。
経験者が大腸内視鏡検査に求める3つのポイント
鎮静剤を使用して、寝たまま(うとうとしたまま)受けたい
検査経験者のうち、「鎮静剤を使用して受けたい」人は約28%にのぼりました。また、検査後の体調として、「検査後もおなかの違和感や痛みを感じた」と回答した人は約18%で、鎮静剤を使用した人では約14%にとどまりました。このことから、鎮静剤を用いたほうが、検査後のおなかの違和感や痛みは軽減される傾向にあることがわかりました。
細い内視鏡で検査してほしい
「検査後もおなかの違和感や痛みを感じた」と回答した人は、女性は男性に比べて約1.5倍多く、女性の方が痛みが長引く割合もやや高いことがわかりました。一般的に、男性に比べて女性は腸管が細く、その分大腸内視鏡の挿入が難しいため、苦痛が生じやすくなる傾向があると考えられます。一般的な大腸内視鏡は外径12~13mmですが、最近は外径約11mmの細いタイプも登場しており、スムーズな挿入をサポートする機能も搭載されています。不安のある方や前回の検査で苦痛を感じた方は、医師に相談してみることをおすすめします。
検査中の対応事項をあらかじめ知っておきたい
大腸内視鏡検査は、体の左側を下にした横向きの体勢からスタートして、検査の途中で、仰向けや右向きになったり、足を組んだりと体勢を変える指示が医師や看護師から伝えられます。患者さんのおなかを軽く押さえて、内視鏡の進行をサポートする場合もあります。検査中にガス(おなら)が出そうになった場合は、内視鏡の挿入段階によって我慢したほうがよいケースがあるので、医師に伝えて指示に従うようにしましょう。
不安をできるだけ解消して、検査当日を迎えましょう
受けるまでは心配や不安を感じる大腸内視鏡検査も、自分でできる対策をしたり、検査について知ることで、ある程度の心の準備ができます。わからないことや不安なことは医師や看護師に相談して、できるだけ不安を解消しておきましょう。検査前日から検査後までの全体の流れについて、「大腸内視鏡検査の受け方」で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
*調査データ
出典:胃・大腸がん検診と内視鏡検査に関する意識調査2024(オリンパス)
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